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ガーデン防衛53

 プリスは自分の分の食事を取りに行くために一度食堂を出ていく。

 程なくして一人分の食事を運んできたプリスは、エインの隣の席にそれを並べる。

「…………」

 食事を並べ終えると、プリスは本当に席に着いてしまってもいいものかと思案するように動きを止めた。

「構わんから早く席に着け、食事が冷めてしまう」

「……畏まりました」

 エインに促されたプリスは、覚悟を決めたように淀みなく席に着いた。

 ひたすらに機嫌がいいエインは、プリスが席に着いたのをにこやかに確認すると、手を組み食前の祈りを捧げる。

「さぁ、食べようか」

 それが終わると、弾む様な声音でそう告げる。

 プリスもエインと共に食前の祈りを済ませるとエインの言葉に頷き、エインが食べ始めたのを確認してから食器に手を伸ばした。

 ヒヅキもエインと共にそれっぽく食前の祈りを捧げると、エインに続いて食事を開始した。

 三人の眼前に並ぶ食事は、乾燥野菜と穀物を一緒に煮込んだものと黒く硬いパン、それと炭酸水であった。

 それは現在の食糧事情を考えれば十分な食事で、煮込み料理に手を付けてみると、中に何かの肉が入っているのが分かった。

 ヒヅキは硬いパンを、汁気が残されている煮込み料理に浸けてふやかしてから口にする。口に広がる柔らかな味は、食べて落ち着くモノがあった。

 そこに炭酸水を飲むと気持ちが少しだけ締まり、緩み過ぎないようにしてくれる。

 その食事を食べていると、エインがヒヅキに問い掛ける。

「プリスの作る料理が美味いのは知っているが、何か話があるのではなかったか?」

 それで思い出したヒヅキは、用意されていた布で口元を拭うと、炭酸水を一口飲んでエインの方を向く。

「ガーデン周辺のスキア殲滅について提案があるのですが、よろしいでしょうか?」

「む?」

 ヒヅキの言葉に、エインとプリスは食事の手を止める。

「聞かせてくれ」

 ヒヅキに正対するように身体の向きを変え、居住まいを正したエインに頷くと、ヒヅキは自分の案を披露する。

 ヒヅキが話すその腹案は実に単純で分かりやすいものであった。それでいてガーデンに被害がほとんど無いという理想的な案。ただし、それを実行できるのはヒヅキ自身しか居ないという欠点もあった。

「それで、私にどうしろと?」

 ヒヅキの話を聞いたエインは、ヒヅキの真意について探るように問い掛ける。

「殿下には兵の鼓舞と指揮を」

「……ふむ」

 それにエインは暫く考え、嫌そうな表情を浮かべる。

「もしかしなくとも、私を君の前に出すつもりか?」

「はい。以前にお話したように、殿下には救国の英雄になってもらおうかと」

「……それではこの国を離れられなくなってしまうではないか」

「ですが居場所は出来ましょう? 現状で英雄に手出しはおいそれとは出来ませんよ」

「気苦労は増えそうだがな」

「ええ。ですが、国の復興には英雄が必要ですよ」

 エインは困ったようにガリガリと頭をかく。

「……意外と、案外と……いや、相変わらずか、君は(さか)しくて敵わんな。それでは断れないではないか」

「殿下ならそう言っていただけると信じていました」

「はぁ。これでは旅は無理か……だが、旅に出てもたまには私の顔を見に来いよ。時機を見て意地でも一緒に旅をしてやるからな!」

 そう言うと、エインはヒヅキに向けて意地の悪そうな笑みを浮かべる。

 それを受けたヒヅキは、「楽しみにしています」 と、余裕の笑みで応えたのであった。

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