ガーデン防衛49
「それで、その後はどうしたのだ? スキアの討伐を終えて直ぐに消えたと聞いたが」
「ガーデンの路地裏に。と言いましても、あの時はほとんど意識が無かったので、朧気にしか覚えていないのですが」
「意識が無かったのか? いつから」
「スキア討伐の終盤は覚えていませんね。正直あの時死んでいてもおかしくなかった訳ですし」
「…………そうか、生きていてくれて本当によかった」
何と言えばいいのかと言葉を詰まらせながらも、エインは何とかそれだけは口にした。
「もう二度とあれはやりたくないですね。そして魔力が尽き、体力も無くなったので路地裏で気を失っていました」
「そう、だったのか」
「ええ。意識を取り戻しても身体は動きませんし、魔力や体力が戻っても、そもそも肉体が破損していましたからね。特に脚なんて使い物になりませんでしたよ」
「それで、どうしたのだ? 今見る限り脚は無事そうだが」
ヒヅキの脚に目を向けるエイン。
「……その時に回復魔法を修得しまして、それで何とかなりました」
「ん? どういう事だ」
「秘密ですよ? エインを信頼して話しますが、気を失った時にふと回復魔法の方法が頭に浮かびまして、そのおかげで何とかなったんですよ。素質でもあったんですかね?」
ヒヅキは嘘という訳ではないが、真実でもない事を伝える。
「そういうモノなのか? 私は魔法が使えないからよく判らないが」
「そういうモノなのでは? 私にも魔法はよく解りませんので」
エインは困惑しながらも、謎が多い事柄故に一応そういう事で納得したらしい。
「それで、回復魔法で脚を修復するのに三日ほど要しまして、それが終わってシロッカスさんの家に戻ったのです」
「私の部下が君を探していたと思うが」
「ああ、あれはエインの部下でしたか。所属不明だったので身を隠していました。隠れるのも結構大変だったんですよ?」
「むぅ。確かに君は目立ったからな。言いたい事はあるが、それはこちらの落ち度だな」
エインは不満そうにしながらも、それを口には出さずに自分の非を認める。
「そして、シロッカスさんのところで寛いでいた時にここに呼ばれたという訳です」
「むむむ。そうか、それはすまない事をしたな」
「いえ、これがスキア襲撃後の話です」
「……はぁ、相変わらず君には苦労を掛けるな」
エインは頭を押さえると、疲れたような声を出した。
「それで、そちらはどうなったのですか?」
「ん? ああ、まずは調査の結果、スキア襲撃の前に王妃と王、王子二人もガーデンを脱していたのが分かってな。そこからも黒き太陽を使用したのは王妃か第二王子だと予想される。ただし、実際に使用したのは別の者だろう。それは現在調査中だが、そちらはもうすぐ捕らえられそうだ」
そこでエインは一つ息を吐くと、続きを話すために口を開いた。




