表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
245/1509

ガーデン防衛48

 エインが語るは王妃と第二王子が起こした愚行の一幕。

 それをヒヅキに話すエインは顔を伏せてはいるが、口調は淡々としていた。

「そういう事があったのだよ」

 それを聞いたヒヅキは、少し考え問い掛ける。

「それでは、あの黒き太陽を使用したのは王妃か第二王子ですか?」

「状況を考えればそうだろうな」

 顔を上げたエインは、困ったように肩を竦めた。

「なるほど。それで当たりを引いたと」

「ああ。君が居なければ、確実にガーデンは他の砦同様にスキアによって蹂躙されていた事だろう。本当に感謝する。それに、貴重な魔法道具まで使わせてしまって……」

 腕をダラリと身体の横で力なく垂らし、エインは申し訳なさそうな表情を見せる。

「ああ、あれなら別に気にしてませんよ。役に立ったのならばよかったです」

 そう言いながらヒヅキはそんなエインの様子を眺め、僅かに考える。

「……お疲れ様です。恐かったですね」

 ヒヅキの優しい声音の言葉にエインは顔を上げると、泣きそうな顔になり立ち上った。

「……君が居てさえくれれば」

 エインはヒヅキに近づき胸倉を掴むと、一瞬堪えるようにヒヅキを見つめるも、直ぐに力なく膝を折って顔をヒヅキの胸元に押し付ける。

 そんなエインの頭を、ヒヅキは母親のように優しく撫でた。

 室内に静かな時間がゆっくりと流れる。

「恐かった、恐かったよ」

 くぐもったような涙声で弱音を吐くエインの頭を、ヒヅキは黙って優しく撫で続ける。

「何で、何で私ばかり。私は王位など要らないというのに、何故こうも愛情とは無縁なのだ」

 しばらくの間そうしていると、エインは満足したのか顔を上げて、ばつが悪そうに赤い目をヒヅキに向ける。

「……今のは他言するなよ」

「ええ、勿論ですとも。エイン」

「むぅ。そこでそれは卑怯だ。君は思っていた以上に悪い男のようだな」

 エインはヒヅキを恨みがましく見上げながら頬を膨らませる。

「お嫌ですか?」

 ヒヅキはポケットからハンカチを取り出すと、それを差し出す。

「言わせるな、知っているのだろう」

 エインはそれを奪うように受け取り立ち上がると、そっぽ向いてハンカチで目元を拭いながら向かいのソファーに戻っていく。

「君には訊きたい事が色々あるんだ」

 ソファーに腰掛けたエインはヒヅキに向き合い、不機嫌っぽくそう言い放つ。

「何でしょうか?」

 そんなエインにヒヅキは微笑みかける。

「むぅ。その余裕そうな感じが気になるが、まあいい。まずはそうだな、一応確認しておくが、あの日スキアの侵攻を南門で防いでくれたのは君で間違いないか?」

「ええ、そうです」

「やはりそうか。君以外には居ないが、それでも信じられない戦果だったな」

 あがってきた報告の内容と、冒険者のカタグラが記録していた映像を見た時の事を思い出し、エインは感心とも呆れともとれる息を吐き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ