ガーデン防衛47
その後もシロッカス達と少し言葉を交わしたところでヒヅキに来客が訪れた。
「少し出てきます」
来訪者がエインの使いを名乗ったことを伝えられたヒヅキは、シロッカスにそう告げてメイドの先導に従い部屋を出ると、以前プリスに預けられた鍵を取りに一度部屋へと立ち寄ってから来訪者に会いに行く。
来訪者は最近よく会う身なりの綺麗な男性であった。
「おお、ヒヅキ様ご無事なようで!」
ヒヅキが姿を現すなり、男性は少々大袈裟なぐらいに声を上げる。
「ご心配をおかけしたようで」
それにヒヅキは軽く頭を下げて応えた。
「それで、本日はどうかされましたか?」
挨拶もそこそこに、ヒヅキは用件の分かりきった事を尋ねる。
「エイン様がお呼びです。今からご足労願えませんか?」
「……分かりました。では直ぐに伺いましょう」
予想していた通りの返答に、ヒヅキは僅かに考えるような素振りを見せてからそれに応えた。
ヒヅキの返答に使者の男性は頷く。
ヒヅキは控えていたメイドに出てくることを告げると、二人はシロッカス邸を後にした。
慣れた道を通り、ヒヅキはプリスの屋敷に到着する。
いつも通りに侍女服を身に纏っているプリスが姿を見せると、使者の男性はヒヅキの先導をプリスと交代して帰っていった。
「どうぞヒヅキ様。御待ち申し上げておりました」
そう言ってヒヅキを屋敷内に通すと、プリスはヒヅキの先導を開始する。
案内されたのはいつもの応接室ではなく、今回も客室であった。
プリスがヒヅキの来訪を告げ、エインが入室を許可すると、ヒヅキはプリスが開けた扉から室内に入る。
ヒヅキが室内に入ると、プリスは扉を閉めて離れていった。、
室内ではエインが難しい表情で書類に目を向けていたが、ヒヅキが室内に入るとエインは笑みを浮かべてソファーを勧める。
「どうかされたのですか?」
エインに勧められるままにソファーに腰掛けたヒヅキは、先程のエインの表情が気になりそう問い掛けた。
「ここ数日居場所が掴めなかったが、何処に居たんだい?」
しかし、エインはヒヅキの問いには答えず、逆にそう問い掛けた。
「路地裏で回復するまで隠れていました」
ヒヅキが正直にそう答えると、エインは疲れたような息を吐く。
「何故隠れて?」
「弱っていたもので」
「……そうか」
エインは何か言いたそうな雰囲気ながらも、申し訳なさそうにそう呟いた。
「それでは、君はその間の街の様子は知らないのか?」
「ええ。何かあったので?」
「…………はぁ。王が連れ去られた話がどこからか漏れた」
「王が?」
訝しげな表情を浮かべたヒヅキに、エインはヒヅキに王の一件を話していない事に思い至る。
「そうだった、君には話していなかったな。あれから色々あって、君に助けられたから話した気でいたよ」
そう言うと、エインはどこか泣きそうな弱弱しい表情で語りだした。