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ガーデン防衛46

 シロッカス邸に入ったヒヅキは、一度自室に寄ってから、まずは身体の汚れを落とす為に風呂場に移動した。

 事前に聞かされていたとはいえ、まだ湯を沸かしていなかった為に、ヒヅキは水で身体を洗い流して綺麗にする。

 その後にヒヅキは服を着替えて準備を整えると、風呂に入る前にシンビからシロッカスが待っていると告げられた食堂へと移動する。

 脱いだボロボロの汚れた服は、洗濯しようとやってきたメイドに、もう必要ないからと捨ててくれる様にヒヅキは頼んでおいた。

 食堂へと移動すると、シロッカスとアイリスに迎え入れられる。

「おかえり、ヒヅキ君」

「ご心配をおかけしました」

 シロッカスの言葉に、ヒヅキは帰宅の言葉の代わりにそう口にする。実際遅くなると言って、帰ってくるのに三日掛かったのだから。

「君の事だ、大丈夫だと思っていたさ」

 安堵を含みつつも、シロッカスは笑ってそう答える。

「さぁ、お腹がすいていないか? 食事をしながらでも話を聞かせてくれ」

 そこで食堂の扉が開き、いい匂いが漂ってくる。

 食事を運んできたメイドが、ヒヅキの前にそれを並べる。シロッカスとアイリスは朝食を済ませた後なのだろう、二人の前には軽い食事が少しだけ並ぶ。

「さぁ、食べてくれ」

 シロッカスに礼を言うと、ヒヅキは形だけの祈りを捧げて食事を開始する。

「それにしても、相変わらずヒヅキ君には驚かされてばっかりだな」

 ヒヅキが食事を始めてしばらくして、シロッカスがそう口を開いた。

「先日の件を話には訊いたが、一人でスキアを食い止め続けるとは、ガーデンに住む者として本当に感謝しかないよ」

 口の中を空にすると、ヒヅキはどこかお道化るような軽い口調で言葉を返す。

「たまたま上手くいっただけですよ」

 謎の声が手を貸したから上手くいったのであって、ヒヅキの言葉は事実であった。しかし、それを知らない第三者には、ただヒヅキが照れ隠しに謙遜した様にしか映らない。

「相変わらず君は欲がないな。これは大いに誇ってもいい事なのだが」

 シロッカスは少し呆れ気味に肩を竦める。そのやり取りをアイリスは微笑ましく見守っていった。





 ヒヅキは食事を終えると、シロッカスに感謝を述べた。そして、少し考え言葉を続ける。

「それと、もうすぐガーデン周辺に居るスキアを退治しますので、ご安心ください」

 ヒヅキのその発言に、シロッカスとアイリスだけではなく、その場に居たシンビを含めた数名のメイドも驚愕する。

「それは本当か? でもどうやって? 数が多いと聞いているが」

「そうですね、現在で大体総数5、600ぐらいでしょうか。1000は居ないと思います。先日の一件でそれ以上を倒したというのに、直ぐに集まってきますね」

 そのヒヅキの身立てた数に、ただただ絶句する一同。

「ですが、準備はほぼ整いましたのでご心配なさらずに。ただ、最後の準備が整うまではスキアが大人しくしてくれればいいのですが」

「最後の準備?」

「私は目立ちたくはないので、エイン殿下に表に出てもらおうかと」

「なるほど。だけどそれでいいのか?」

「どういう事でしょうか?」

「君への賞賛が無くなるかもしれないが」

 シロッカスの心配を理解したヒヅキは、そんな事かと小さく笑う。

「むしろその為にエイン殿下には表に出てもらうのです。私に栄光は必要ないモノですから」

「…………」

 一瞬の迷いもなく、当たり前だといわんばかりにそう言い切ったヒヅキに、シロッカスは言葉に詰まる。

「とにかく、近いうちにこの騒動も終わるでしょう」

 そう言って、ヒヅキは笑いかける。しかし、その笑みはどこか儚く、今すぐにでも消えてしまいそうな危うさを感じさせる笑みであった。

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