ガーデン防衛40
「ん……んん?」
意識を取り戻したヒヅキは、まだ鈍い頭を回転させて目だけで周囲を確認する。
(どれだけの間意識が飛んでいた?)
ヒヅキは重い身体を持ち上げようとして、仰向けに転がるのが精一杯だった。
(星が綺麗だ……)
仰向けになった事で視界に広がる満天の星に、ヒヅキはそれを久しぶりに見た気がする。
(ああ、いつも警戒していたからか)
月と太陽から受ける不快な感じに、ヒヅキは星空を楽しむ余裕などまるでなかった。それに加えて最近はスキアへの警戒も増えたために、ヒヅキは思っていた以上に心の余裕を失っていた。
(結局時間は分からないな)
気を失う直前にはヒヅキはもうほぼ意識が無い状態だったので、ヒヅキが覚えている事といえば、南門で行ったスキアとの戦闘の途中まで。その時も星空を眺めている余裕など持ち合わせていなかった。
(それでも回復が早すぎるな)
気を失っていた正確な時間は判らなかったが、それでも夜の内に意識を取り戻せるほど消耗は軽微ではなかったはずだと、ヒヅキは現状を訝る。
『ああ、それは私が少し魔力を分け与えたからだね』
(!!)
突然頭に響いた声に、ヒヅキは驚く。
『すまない。驚かせるつもりはなかったのだが』
(いえ、勝手に驚いただけです。それよりも、魔力をありがとうございました)
『構わないさ、少量だしね。それよりも全快させたほうが良かったかな?』
(これ以上は必要ありません)
『だろうね』
先程のスキアとの長期戦で、ヒヅキはこの謎の声に借りを作りすぎた。更に今から情報を訊こうというのに、これ以上の施しはあまり歓迎できるものではなかった。
『それで、何について訊きたいんだい?』
謎の声の問いに、ヒヅキは思案する。
(そうですね、色々ありすぎてどれから訊くべきか……)
『それじゃあ、一つだけ質問を受け付けよう』
(……一つ、ですか)
『うん。今回頑張った褒美さ。本来私に答える義務は無いんだけれどね』
(ありがとうございます)
そう言われては、ヒヅキは何も言い返せなかった。一つでも答えてくれるならかなりいい話だろう。
(では、教えてください)
『何について知りたいんだい?』
(スキアについて教えてください)
『それでは少々広い。スキアの何について知りたい?』
(……スキアとは何なんですか?)
『ああ、それなら知っているよ。だけど、どう答えたものか。前に答えた時には軽く引かれたからな……』
そう言うと、謎の声は考えるような間を空ける。
『その前に君にこれを確認しなければいけなかった』
謎の声はうっかりしていたと言わんばかりにそう呟くと、ヒヅキに一つの問いを投げた。
『君はこの世界が何度も滅んでいる事を知っているかい?』