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ガーデン防衛39

(これを凌ぐね)

 未だに迫りくる眼前のスキアの群れに、ヒヅキは内心で苦笑を漏らす。

(いくら万全の状態に戻ったとはいえ、黒き太陽の効果時間が最大三時間だと仮定したら、今のままでは足りない気がするのだけれど……)

 光の剣の出力を再調整しつつ、魔力管理を徹底する。もう予備魔力は存在しない。

 右に左にと反復しながら光の剣を振るい、殺到してくるスキアを瞬く間に倒していく。その際、ヒヅキは視界の隅で冒険者らしき存在を捉えたものの、確認出来た数があまりに少なく、参戦されたら邪魔でしかないというのは困ったものだった。

(黒き太陽はまだ効果が終わらないのか!!)

 黒き太陽が使われたのが居住区画である為に、ヒヅキが戦っている第一の門からでは高い城壁が邪魔をして黒き太陽の消滅の確認が出来ない。とはいえ、例え確認できたとしても、背後を向いている余裕はないのだが。

 時が経つにつれて集まってくる兵士の数が増えてくるものの、残念ながら全く役に立っていなかった。冒険者は状況を理解し、第二の門の方へと防衛に回っている。

(魔力残量は多くは無い。魔力運用の効率をこれ以上によくするにはどうすればいい……)

 ヒヅキは思考を必死に回転させるも、スキアに対処しながらでは思考をそちらに割いている余裕があまりなかった。

 少しずつ少しずつ消耗していく感覚を再度感じながら、戦っている間の呼吸はほぼ止まり、意識も混濁し始める。

(しつこいものだ)

 上手く回らぬ思考の中、半ば無意識でヒヅキはスキアに対処し続ける。

 ヒヅキがスキアと戦闘に入って約二時間半が経過し、ヒヅキは最早倒れる寸前であった。

 地に足がついているのかさえおぼろげな感覚の中、何故か魔力が一切減らなくなるも、微かに残っているヒヅキの意識では、光の剣と身体強化が使われている事ぐらいしか理解出来ていない。

 それほどに消耗している為に何故と疑問を抱く余裕さえないヒヅキではあったが、黒き太陽が使われてから三時間が経ち、やっと黒き太陽の効果が終わる。しかし、だからといって殺到しているスキアが直ぐに消える訳ではない。

 増える事の無くなったスキアを、ヒヅキはほぼ無意識のままで迎撃し続ける。そして、とうとうスキアの襲撃を凌ぎきると、ヒヅキは僅かに残っていた意識を総動員して、なんとかその場から去った。





 ガーデンの居住区画の一角。深夜という事もあるが、元々人通りの少ないそこには今は誰も居ない。

 その一角までヒヅキは辛うじて移動すると、(つまず)いたようにうつぶせに倒れた。

(意識が……駄目だ、まだ少し、あと少し保ってくれ)

 倒れたまま緩慢な動作で手を伸ばすと、ヒヅキは這うようにして前に進む。しかしそれも、数センチ進んだだけで止まってしまった。

『約束を守ろうかと思ったのだが、どうやらそれどころではないらしい』

 気を失ったヒヅキの頭に、その声は響く。

『……しょうがない。私の手助けがあったとはいえ、君は命を張って頑張った。ならば、多少は報われてもいいだろう』

 その声と共にヒヅキの枯渇寸前であった魔力が少し回復する。

『これで直に意識は戻ろう……暫し待つとするか』

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