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ガーデン防衛34

「エイン様。御聞きしたいのですが、一体ここで何があったのですか?」

 主従の絆を再認しているところを申し訳ないと思いながらも、カレジはエインに問い掛ける。証人が居るのならば、憶測は一旦横に置いてただ真摯に耳を傾けるべきだろう。

「ここで、か。……何、難しい話ではないさ。まず王妃と第二王子が王と第一王子、それに私の三人の食事に薬を盛った。王と第一王子はどこかに、おそらく馬車へと運び出され、私は殺された。周囲に居た使用人は全て王妃の手のものだった。ただそれだけだ」

「では、やはり王と殿下は……」

「王と第一王子を連れた王妃と第二王子は、ソヴァルシオンへと向かったはずだ」

「ガーデンは破棄されるおつもりか!」

 奥歯を噛んで怒りを抑えるカレジ。

「それにしても、なぜ私は生きているのだ?」

 殺された瞬間を今でも鮮明に覚えているエインは、恐怖に身を震わせるように身体を揺すった。そこで、太腿の辺りに何かが刺さったような小さな痛みを覚える。

「ん?」

 エインはその正体を探るべく、ドレスのポケットの中を調べる。そこにあったのは。

「……割れている。せっかく彼に貰ったものだというのに」

 手のひらの上に転がる肩の辺りから鋭く斜めに割れている人形の木の板に、エインは悲しげな声を出した。しかし、それも横からの驚愕の声にかき消される。

「そ、それは! エイン様、手に取って見せて頂いても宜しいでしょうか?」

「あ、ああ。構わんが?」

 カレジの先程の怒りを忘れたかのような驚愕の表情に、エインはその変化に驚きながらもその割れたお守りを差し出す。

「これは……間違いない……」

 丁寧な手つきで掴んだそのお守りを繁々と確認したカレジは、信じられないものを目にした様な浮いた声を出す。

「それが何なのか御存じなのですか?」

 プリスの問いに、カレジは重々しく頷いて答える。

「呼び名は本や伝承によって幾つかありますが、一般的には身代わり人形と呼ばれているモノです」

「身代わり人形とは?」

 聞き慣れない言葉に、エインはそれを聞き返す。

「簡単に言ってしまえば魔力の込められたお守りです。それは込められた魔力量で効果が変わりますが、これはエイン様の身に起きた事を考えれば、所持者の死を一度だけ肩代わりするという飛び抜けた効果を持つ、身代わり人形の中でも最上級に位置している命の身代わり人形というお守りで間違いないでしょう」

「……そんなモノが」

 あまりに現実味の無い話に、エインは信じられないという声を出す。

「ええ、お伽噺に出てくるような伝説の代物です。存在は確認されておらず、言い伝えだけが僅かに存在していましたが、よもや本当にこんなものが存在していたとは……エイン様は一体これをどこで手に入れられたのですか?」

 カレジの問いに、エインは少し考える間を置いて答える。

「……貰いものだ」

「こんな伝説級の稀少品をですか!?」

 エインの返答に、カレジはあまりの驚きに大声を出した。

「あ、ああ。とある人物に今日貰ったモノだ」

「今日、ですか?」

「勘の鋭い人物だ、何かを感じ取ったのかもしれないな」

「ええ、本当に感謝しなければなりません」

「その人物は信用できるのですか? いえ、エイン様の命を救ってもらったのは事実ですが、それにしてはあまりにも渡した時期がよすぎる気も……」

 エインはカレジの言葉がよく理解できた。実際、お守りの正体を知ったエインも同じように感じたからだ。しかし、ヒヅキという人物の一端を知るエインはそれとは別に、彼なら多少の未来が見えていてもおかしくないのかもしれないと考えていた。

「言いたい事は分かる。だが、私はその人物をそこのプリスと同じように信頼している」

「彼女と同じように、ですか……」

 プリスの方に目を向けたカレジは、それ以上ヒヅキについては口にはしなかった。

「しかし、これがそんな貴重品だったとはな」

 エインは割れてしまったお守りに目を落とす。

「あの方は御存じだったのでしょうか?」

「当然の様に知っていただろうさ」

「……かもしれませんね」

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