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ガーデン防衛23

 ヒヅキが着替えを済ませて、木の板で出来た人形をポケットに入れて脱衣所を出ると、そこにはここまで案内してきた侍女が立っていた。

「それでは食堂へと御案内致します」

 ヒヅキが出てきたのを確認した侍女は、背を向けて先を歩きだす。

 それについて行きながら、ヒヅキは自分が着ていた服について問い掛けると、侍女はヒヅキに背を向けたままそれに答える。

「ヒヅキ様の御召し物でしたら、勝手とは思いましたがただいま洗濯させて頂いております。破損箇所の修繕を終えましたら御返し致します」

「いえ。わざわざ直して頂かなくとも、洗濯して頂けただけで十分ですので」

 既にぼろきれ同然の服である。わざわざそこまでしなくともと思っての発言だったのだが、しかしヒヅキのその言葉は受け入れられる事がないままに食堂に到着する。

「どうぞ、こちらに腰掛け暫し御待ち下さい」

 侍女に勧められるがままに、ヒヅキは引かれた椅子に腰掛ける。

 その椅子にヒヅキが座ると、侍女は部屋を出ていった。それから少ししてヒヅキが一人で待っていると、侍女が食事を持って戻ってくる。

「どうぞ、御好きなように御召し上がりください」

 目の前に食事を置いた侍女に、ヒヅキは疑問に思ったことを確認する。

「この屋敷には他に人は居ないのですか?」

「はい。現在この屋敷には、ヒヅキ様以外にはエイン様と私のみで御座います」

「そうですか」

 それに頷きつつ、ヒヅキは目の前の食事へと目を移す。そこに置かれているのは、深めの皿が一つとグラスのみ。

 その深めの皿の中は、肉と魚と野菜を細かく刻んで穀物と一緒に煮込んだ粥であった。グラスは炭酸ガスを含んだ果実酢で満たされている。

 ヒヅキは形だけの祈りを捧げると、食事を開始する。

 まずは果実酢を一口飲んで口を潤す。強い酸味の中に果実のほのかな甘みが感じられ、炭酸が口腔内を刺激して楽しませてくれる。

 果実酢の入ったグラスを机に置くと、ヒヅキは匙を取り粥を食する。

 しっかりと煮込まれた粥はドロドロに溶けているものの、適度に冷まされている為に、するりと喉に滑っていく。

 塩味が薄いおかげで様々な素材の旨みがしっかり感じられる優し味付けであった。

 スキアとの戦闘で疲労した身体には有難いその味付けに、ヒヅキはおそらくこの粥を作ったであろう侍女に内心で感謝しながら食事を続け、綺麗に粥を平らげ、果実酢も飲み干した。おかげでヒヅキは少し元気になったような気がした。

「美味しかったです。ご配慮感謝致します」

「御口に合ったのでしたら良かったです」

 ヒヅキの言葉に侍女はその感情の乏しい顔に僅かに笑みを浮かべると、食事の片づけを行う。

「エイン様に取り次いで参りますので、少しの間その場で御待ちください」

 そう言うと、侍女は食器を手に下がっていった。

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