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小鬼去りて

 小鬼の残党が本拠地から逃げ出すも、本拠地やその周囲の騒ぎに外で警戒していた冒険者たちがそれに対処したおかげで、小鬼は次々と処理されていった。

 それでも逃げ出した小鬼の数が多かっただけに討ち漏らしがいくつかあったが、それはヒヅキが逐次対処していったおかげで、無事に小鬼討伐の依頼は完遂されたのだった。

 討伐が終わり辺りに静けさが戻ってきだした頃、小鬼が全て討伐されたのを確認するために、集まった冒険者たちがしばらく付近の見回りや小鬼の本拠地の探索を行い、脅威が完全に排除されたのを確認した後、それぞれの行動拠点としていた町や村に帰っていった。あとはしばらくその地に留まり、しっかり安全を確かめてから、多くの冒険者たちの国であり街であり家でもあるソヴァルシオンに報告に帰るという流れになるらしい。

「…………」

 散策を終えた冒険者たちが去った小鬼の本拠地だったものを、ヒヅキは森の木の上から何とはなしに眺めていた。

「呆気ないものだ………実に呆気ない」

 ヒヅキはそう呟くと、小さく息を吐き出した。

 そんなヒヅキを呼ぶ声が下から掛けられる。

「おーーーい!君はチーカイの酒場に居た人かい?」

 ヒヅキは見る人によっては面倒くさそうな印象を受けるようなゆっくりとした動作で上半身を捻って下へと目線を向けると、そこには赤髪の男を先頭にした、見覚えのある5人組の冒険者の姿があった。

 ヒヅキは木の上から降りると、人当たりの良さそうな柔和な笑みを浮かべて冒険者たちの前に立つ。

「お久しぶりですね、元気そうでなによりです」

 そのヒヅキの挨拶に何を思い出したのか、少し苦味のある笑みを浮かべた赤髪の男だったが、すぐに気を取り直してヒヅキに問いかけてきた。

「一体ここで何をやってるんだい?」

「様子を見に来たんですよ」

「様子を?」

 赤髪の男の問いに、丁寧でありながらも親しげな口調でそう返したヒヅキに、赤髪の男は不思議そうに首を捻った。

「ええ、なにやら森の方が騒がしかったので何事かと思いまして」

 赤髪の男の疑問にヒヅキがそう答えると、赤髪の男は「そう……なのか?」と、納得のいっていない曖昧な相づちとともに、胡散臭げなものを見るような疑いの眼差しを若干含んだ視線をヒヅキに向けた。

 しかし、ヒヅキにそれを気にする様子は微塵も無いようで、「それでは」と言って簡単に会釈を済ませると、赤髪の男たちの横を通り抜けるように歩きだした。しかし、

「ちょっと待って、君にひとつ訊いておきたいことがあるんだけど……」

 そう言って、何事もなく冒険者たちの横を通り抜けようとしていたヒヅキを、突然桃茶色の髪の女性が引き留めたのだった。

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