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ガーデン防衛22

 エインの侍女に案内されるがままに連れてこられたのは、エインと会う時に使っているあの屋敷であった。

「どうぞ中へ」

 侍女の言葉に従い、ヒヅキは屋敷の中に入る。

「まずは御風呂に入られますか? それとも御食事を御用意致しましょうか?」

「……お風呂に先に入りたいです」

「畏まりました」

 侍女は恭しく頭を下げると、ヒヅキを浴場まで案内する。

「ヒヅキ様が御身体を洗い流しておられます間に、御召し物は脱衣所の方に御用意しておきますので」

「ありがとうございます」

「御食事は御風呂の後に致しますか?」

「……殿下と会わなくてもよいのですか?」

 ヒヅキの当然の疑問に、侍女は何でもない事の様に答える。

「大丈夫で御座います」

「……殿下はこの屋敷に御在宅で?」

「勿論で御座います。現在は王宮での仕事をこちらでこなされております」

「……そうですか」

 ヒヅキは侍女の言葉を疑いつつも、今は何も言わない事にする。少なくとも、侍女からは敵意のようなモノは感じられなかった。

「どうぞ、御好きなように御使いください。御要望でしたら御背中を御流し致しますが?」

「ありがとうございます。ですが、自分で出来ますのでお構いなく」

「畏まりました」

 頭を下げた侍女は、踵を返して来た道を戻っていく。それを見届けると、ヒヅキは脱衣所の中に入る。

 脱衣所は広かったものの、やはりシロッカス邸程ではない。それでも壁や床、籠などの小道具類に使われている素材は良質なものであった。

 ボロボロの服を脱いだヒヅキは、それを持ち上げ改めてその服を眺めて、酷いものだと感想を抱く。

 その服を籠の中に入れて、ポケットに入れていた人型にくり貫かれた木の板のお守りやハンカチなどの小物類を籠の横に置くと、ヒヅキは脱衣所と浴室を隔てている扉を開いて浴室へと移動する。

 浴室は浴槽と床板だけのとても質素なものであった。それでもやはり使っている物は質のいいものであった。浴室を満たす花のいい香りは、事前に何か香でも焚いていたのか、もしくは湯に何か香料となるものを混ぜているのか。

 張られていた湯を使い、ヒヅキは身体に付着している血と土を落とす。傷は浅く、既にほとんどが塞がっていたものの、それでも少しだけ傷に湯が沁みて、ヒヅキは小さく鼻から息を出す。

 それから時間をかけて丁寧に身体の汚れを落とすと、ヒヅキは湯船にその身を浸した。

 ヒヅキはしばらくの間疲れを癒すかのように湯に浸かると、浴室から出る。

 脱衣所には、言葉通りに侍女が新しい服を用意していた。その代り、元々着ていたボロボロの服が見当たらなかったので、もしかしたら洗濯しているのかもしれない。もしくは、ボロボロすぎる為に捨てられた可能性もあった。

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