ガーデン防衛18
迫りくるスキアの群れを光の剣で相手にしながらも、ヒヅキは極力速度を落とさない様にスキアの間隙を縫って突き進む。
(流石に密集してるな)
視界に映るスキアの配置を瞬くより早く理解しながら、ヒヅキは足を動かし続ける。
その超人的な判断力と移動速度を継続し続けるというだけでもかなり厳しいというのに、ヒヅキは光の剣を握る力を強める。
そんなヒヅキ目掛けて、密集しているのも構わずスキアは攻撃してくる。
「ッ!!」
目の前を過ぎ去るスキアの攻撃でさえ、その余波で傷を負う程の威力。それに加えて、スキアの腕などが過ぎ去った際に起こした風に煽られ体勢を崩しそうになる。
(本当に厄介なものだな)
ヒヅキは攻撃の余波の影響を少しでも小さくする為に体勢を低くしながらも、駆ける事を止めはしない。いや、現在地がスキアの群れの真っただ中であるのでやめる事が出来ないとも言えた。
そのままヒヅキはスキアの群れの中を真っすぐに突き抜けていく。光の剣で倒したスキアの数などとっくに記憶に無かった。
(まだ抜けられないのか!)
スキアの攻撃は直撃こそしていないものの、余波で出来た無数の傷でヒヅキは血だらけになっていた。幸いなのは全ての傷が浅いので、血の量も服に小さな染みを作るぐらい。ただし、傷の量が多すぎて見た目は酷いものがあったが。
スキアの群れもとうに半ばを過ぎたとはいえ、まっただ中を駆けるヒヅキに現在地が分かる訳も無く、徐々に焦りが見え始める。
(魔力残量もあと三分の一を越えているぐらいか。この後も大回りでガーデンに戻らないといけないんだが、足りるのだろうか)
スキアに対処しながらも、頭に残りの予定を思い描く。それと共に魔力残量を照らし合わせて大まかな予測を立てていく。
(今がスキアの群れの半ばだと仮定して、この群れを抜けた先でスキアとの戦闘があまりなかったとしても、ガーデンに到着出来た時には魔力は空か、もしくはその前に空になって到着出来ないかぐらい……予備の魔力に手を出すしかないか? いや、一度どこかで休憩した方が確実か)
朝までには帰りたかったヒヅキではあったが、それは難しいと直ぐに諦める。
それからもスキアに対処しながら群れの中を駆け抜けたヒヅキは、とうとう群れの終わりが微かに目に入った。
(もう少しだ。気を抜かないようにしないと)
ヒヅキはそれで気を抜かないようにしながらも、出口を目指してひたすらに駆けた。そして遂に群れを抜けるも、ヒヅキはそれで足を止めることなく動かし続ける。
そんなヒヅキの背後から、スキアが次々追いかけてくる。
(追われる方がキツイな)
背後からのスキアの攻撃を何とか避けながらも、ヒヅキは迎撃よりもスキアの群れから距離を取る事を優先させる。
しかし、それだけでは危険だと判断したヒヅキは小さな魔弾を創り、砲身を出現させると、前を見たまま肩越しに後方へと放り投げるように魔砲を二発放った。
スキアの群れから十分に距離を取ったところで、ヒヅキは振り返り、まだ追いかけてきていた七体のスキアを殲滅させるのだった。