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ガーデン防衛13

「彼は帰ったか?」

「はい。たった今御帰りになられました」

 エインとヒヅキの話が終わり、ヒヅキが屋敷を出たのを見送った後、侍女は片づけの為にエインの下を訪れていた。

「そうか。プリスもご苦労だったな」

「いえ。これが私の仕事ですから」

 カップやポットを盆に載せ、机を拭きながらプリスは言葉を紡ぐ。

「はは。まあ確かに侍女もプリスの仕事か」

「いえ。こちらの方が私の本業ですが」

 愉快げに笑うエインに言葉を返しながらも片づけを終えたプリスは盆を手に立つと、エインに観察するような目を向ける。

「ん? 私の顔に何かついているか?」

「いえ。随分と朗らかに笑われるので」

 プリスは今朝方のエインの様子を思い出し、肩の荷が下りた様な、年相応に近い少女の笑みを浮かべるエインに、不思議そうな顔をする。

「そうか? ……そうかもしれないな」

 少し考えたエインは、思い当たる節に納得したように頷いた。

「どうかされたので? そんなエイン様を目にしたのは……」

 プリスはその綺麗な(おとがい)を少し持ち上げて記憶を探るも、直ぐにその答えに行きつく。

「先日、あの方がいらした時でしたか」

「ああ、そうだろうな」

「あの方と何か関係が?」

 首を傾げるプリスに、エインは可笑しそうな笑いを小さく漏らす。

「何かおかしなことを言いましたか?」

「いや。プリスは昔から変わらんな、と思ってな」

「はぁ……?」

 意味が分からないと、プリスは首を傾げながらも頷く。

「そうだな、私は彼を気に入っているのさ。だから会えて嬉しいし、言葉を交わせて気が晴れたのかもしれないな」

「そうでしたか。そんなエイン様を目に出来たのは、前回を除けば幼い頃以来でしたので、安堵致しました」

「安堵?」

「はい。エイン様は年相応の顔を見せては下さらない方ですから」

「まあ私の周囲は敵が多いからな。本当に王族を辞めたいよ。彼の妻になるってのはいい案だと思ったのだがな」

「あの方の奥方になられるので?」

 相変わらず不思議そうに首を傾げるプリス。

「振られたがな」

 それに肩を竦めてエインは言葉を返す。

「そうでしたか。それは面白う御座いますね」

「な、彼は面白い男なんだよ!」

 そう言うと、エインは僅かに思案する。

「そうだ! プリス、お前も私と共に彼の妻にならないか? きっと面白いと思うぞ!」

 唐突のエインの発言に、プリスは少し首を傾げる。

「エイン様の御命令でしたら、そう致しますが?」

「はぁ。本当に相変わらずだな」

「???」

「いや、なんでもない。気にしないでくれ」

 よく理解してないようなプリスの表情に、エインは手振りを交えながら軽く笑ってそう告げる。

「そこまで気に入っておられるのでしたら、爵位でも授けられますか?」

 プリスの言葉に、エインは静かに首を横に振る。

「爵位は駄目だ」

「そうなのですか? 確かに相応の功績が必要ですが」

「そういう事ではないのだ。功績なら今でもなんとかなるし、これからの事を考えれば爵位でも足りない可能性がある。だが、爵位はまずい」

「何故でしょうか?」

 よく分からないという顔のプリスに、エインは少し目線を外して説明を始める。

「彼は確実に辞退するだろうが、もしも受けてしまい爵位を持ってしまっては彼は貴族になってしまう」

「はい。爵位とはそういうモノでは?」

「まあそういう認識でいいが、貴族というのは国のモノ扱いになる。色々得るモノはあるが、権利に応じた義務が生じる。だがそれでは駄目なのだ、私は廃嫡を望んでいるのだから」

「はぁ……?」

「それに、あの力を見て利用しようと考える者は多いだろう。もしもそれを王が考えてしまったら……」

 エインは一瞬目を伏せると、プリスに目を向ける。

「とにかく、彼に爵位や役職などの身分が伴うものは駄目なんだよ」

 そう言うと、エインは冗談っぽく肩を竦めた。

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