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侵入2

 それは簡潔に述べるならば、粗末な門とでも呼ぶべき代物しろものだった。

 高さは3メートルぐらいだろうか、幅は2メートルぐらいで、両開きのその門は、大きな木の板を二つ固定しただけのような、外観からは何とか開閉が可能なのかも知れないと思わせるような、簡素で粗雑な造りの門であった。

 その門の内側の両脇には櫓が一つずつ建っており、その上には各一人ずつが弓を携えて監視していたが、少し前に外周を回りながら観察した時には門の前に立って警備をしていたはずの二人組は休憩中なのか何処かへと消えていて、櫓の上のその二人以外には警戒している者は確認出来なかった。

「今ならあの返しの下まで移動できさえすれば見つからずに済むな……」

 ヒヅキは裏口の方へと移動すると、櫓の死角から木の壁へと近づく。

「さて、ここまでは上手くいったな」

 そのまま先ほどの門の場所に移動したヒヅキは、どうやって見つからずに中に入ろうかと思案する。

「門の脇にでも小さな出入口ぐらいありそうなものだけど……」

 キョロキョロと辺りを見回すも、それらしいものは見つからなかった。

「出入りにわざわざこの門を開けているのか?」

 ヒヅキは目の前の粗雑なつくりの門を見上げて困ったような呆れたような口調でそう呟くと、入り口を探すのを諦めて門を少しだけ開けて内側の反応を確かめることにした。

 門は大きさの割には軽く、思ったよりもすんなりと開き、ヒヅキは開き過ぎる門を慌てて抑える。

「なんだこの軽さは、中は空洞なのか?それとも開閉部分に何か秘密が?」

 ヒヅキはその門の軽さに知的好奇心を刺激されたが、それを無理矢理意識の外に追いやると、門の隙間から中の様子を確認する。中には門から少し離れたところで数人が立ち話をしているようであったが、幸い門が開いたことには誰も気づいてはいないようであった。

「他には……居ないか……?」

 辺りを見渡すも、その立ち話をしている数人以外には見当たらなかった。

「あれと櫓の上か……」

 少し距離があるとはいえ、バレずに中に入るのは難しく、たとえ入れたとしても、増援を呼ばれる前に櫓の上の小鬼もどうにかしなければならない。

「面倒だな……」

 ヒヅキは息を吐きだすと、心底面倒臭そうにそっと門を閉じる。そのまま、来た道を戻り、再度小鬼の本拠地から少し距離を取る。

「もういいかな、面倒だ」

 ヒヅキは吐き捨てるようにそう呟くと、持ってきていた小さな鞄の中を漁り、中から握りこぶしほどの大きさの球体を取り出した。その球体には30cmほどの長さの縄のようなものがついていた。

 ヒヅキはそれを横に置くと、同じような球体をあと3つ取り出す。その3つは最初のものと全く同じものであったが、内2つは縄の長さだけが違っていた。

「さて、はじめますか」

 ヒヅキは森を移動して正門にほど近い位置に移動すると、その4つの球体を置きはじめる。そして、

「あとはこれに火をつけて……」

 ヒヅキは4つの球体から伸びている4本の縄に順番に素早く火をつけると、そのまま西側の門の方へと駆け出す。

 ヒヅキが西側の門の前の森に着く少し前に、正門の方でドドンという大きな破裂音がふたつ、連続して鳴り響く。

 西側の門で監視していた櫓の上の二人は、その大きな音に反応して正門の方を驚いたように凝視していた。ヒヅキはその隙に門へと近づくと、もう一度正門の方でドンという破裂音が炸裂した。

 ヒヅキはその間にそっと門を開けて中の様子を確認する。中では大勢の人が正門の方へと慌ただしく走っていた。

 ヒヅキが中に入ると、また正門の方でドンという大きな音が鳴り響き、更に場は混乱するも、それはヒヅキの狙い通りであった。

「音だけが派手に響くだけでも十分役に立つな」

 ヒヅキは門の内側に入ると、建物が密集している場所へと移動する。そして、適当な建物の中へと入ると、そこは物置なのかゴミ置き場なのかは不明だが、様々なものが散乱していた。

「あとはこれを使って……」

 ヒヅキは木箱などが乱雑に置かれている一角に移動すると、おもむろに鞄から小瓶を取り出して、その中身を目の前の荷物に振り掛ける。

「えっと、どこだっけ……ああ、あったあった」

 ヒヅキは鞄の中から小さな箱を取り出すと、その内箱をスライドさせる。そこには、10cmにも満たない小さな木の棒の先に、紅く着色された可燃性の薬品が塗り固めたられたものが何本も入っていた。

 ヒヅキはその内の一本を摘まむようにして取り出すと、それを外箱の側面に付いているザラザラした部分に、棒の紅い部分を削るように素早く擦り付ける。すると、擦りつけた紅い部分が燃えだし、木の棒の先端に火が点る。

「まずは一ヶ所」

 ヒヅキはその火が点いた木の棒を、先ほど撒いた可燃性の極めて高い液体の中に無造作に放り込む。

「面倒だし、サクサク行こうか」

 一気に燃え上がる荷物を背に、ヒヅキは急いで建物から出ると、人が集まってくる前に次の建物の中へと入っていった。

「次!」

 ヒヅキは最初の建物で行ったことと同じ工程で建物に引火させると、見つかる前に更に次の建物へと移動する。

 そうして短時間の内にいくつもの建物に火を点けると、混乱する小鬼の中からジッと小鬼を観察する。

「………見つけた」

 大勢の小鬼が混乱するなか、その小鬼たちに怒鳴るようにして次々と指示を飛ばしている小鬼を発見したヒヅキは、周囲の小鬼の流れに乗ってその指示を飛ばしている小鬼の背後へと近づくと、一瞬の交差の隙に、先端に即効性の猛毒を仕込んだ針のようなものを首筋に引っ掻くように浅く突き刺す。

 指示を飛ばしていた小鬼はそれに一瞬違和感を覚えたように顔をしかめるも、直ぐにその場で倒れてしまった。

 指示を待っていた小鬼は突然のその事態に驚愕とともに更に混乱するも、ヒヅキはそっとその場を離れた。

 ヒヅキがそのまま同じように指示を出している小鬼を見つけては始末してを数度繰り返すと、とうとう小鬼の混乱は限界に達し、小鬼は我先にと本陣の外へと逃げ出していく。

「外には冒険者の方々が集まってきてるはずだけど……」

 ヒヅキは面倒そうに鼻から息を吐き出すと、念のために自分も小鬼の本拠地の外へと出て、後始末に取り掛かるのだった。

 面倒系男子!



 すいません言ってみたかっただけです。



 もうすぐヒヅキが旅に出られそうです。


 でもまだ続くよ!チュートリアルが……。

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