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ガーデン防衛12

「まあそうなるよな」

 ヒヅキのその表情に、エインは理解できると小さな笑みを零す。

「申し訳ありません」

 とはいえ相手は王族で、話も王族の事。ヒヅキはつい呆れを浮かべてしまった非礼を詫びる。

「構わんよ。今はただのエインとして接してくれて構わん。君と私の仲だろう?」

 エインは意味深な笑みを浮かべた。

「どんな仲ですか……」

 しかし、ヒヅキはそれに呆れた様に肩を竦める。

「そうだな……個人的には友だと思ているが、恋人のほうが良かったか? それとも私の御主人様とでも呼べばいいのかな?」

 からかうように笑うエインに、ヒヅキは面倒くさそうに口を開く。

「友人辺りにしといてください。それもめ……畏れ多い気もしますが」

「面倒、か?」

 どこか勝ち誇った様な笑みでヒヅキを見るエイン。

「はぁ。ええ、面倒です。私は平穏が好きなので」

 ヒヅキは諦めて白状する。

「はは。それでこそ君だな。だから私は君を気に入っている。まあこの前のような君は今でも恐いがね」

「そうですか。それは光栄ですが、残念ながらあれが本来の私ですよ」

 ヒヅキは試すように僅かに目を細めて微笑む。実際、ヒヅキが見せる表情のほとんどは、相手に合わせた意図的なものであった。

「それは恐いな。だが、今の君も君だろう? ならば問題ないさ」

「…………」

「それに何度も言うが、私は君を気に入っているのでね。それこそ、君の子ぐらいなら産んでもいいと思えるぐらいにはね」

「……はぁ」

 妖艶ながらも、ヒヅキの挑発を嘲笑うようなエインの笑みに、ヒヅキは降参するように息を吐いた。

「ふふん。私の勝ちだな」

「ええ。ですが、あちらの方が本来の私なのは事実ですよ」

「そうか。それでも構わんよ。まあ出来たらあまり表に出さないでくれると嬉しいがね」

「善処します」

「是非そうしてくれ」

 疲れたようなヒヅキとは対照的に、嬉しそうに笑うエイン。

「それで、他には何かありましたか?」

 ヒヅキは気を取り直してエインにそう問い掛ける。

「そうだな。他には代理を通して伝えた通りかな。ああ、戦力というより魔法武器だが、もうそこまで残っていない。なにせ、スキアとの戦いで消費しまくったはずの私個人の魔法武器が、ガーデン全体の魔法武器の3割程を占めているぐらいだからな。これでスキアと戦うというのだから笑えるよ」

「そうでしたか」

 その状態で冒険者不在のまま、スキア相手では役に立たない兵士と共に戦うのだから、確かに笑える話だった。ただし、当事者にとっては愉快な話ではないが。

「君は付与魔法は使えないのか?」

「使えません。私は攻撃のみで付与も治癒も全くできません」

「そうか」

 困ったように考え込むエイン。

「私からの報告は、街の様子は変わらず(さび)れる一方です。外の様子ですが、順調にスキアの数は増えていますね。西側にも現れたという事は、西側の砦も落ちたのでしょうし」

「かもしれない。報告が届かないのは届ける者が居ないからなのか、遅れてるからなのか、はたまたスキアが素通りしてきたか」

「それは分かりませんね」

「ああ」

 エインは僅かな沈黙を挿むと、気持ちを切り換え精一杯の笑みを浮かべる。

「今日は呼び出してしまってすまなかったな。だが、有意義な時間が過ごせたよ」

「またいつでもお呼びください」

「そうだな。いつスキアが攻めてくるか分からんからな」

 そう言うと、最後にエインは少しだけ皮肉っぽい笑みを浮かべたのだった。

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