ガーデン防衛10
ヒヅキがエインに力を貸すことを約束してから、数日が経った。
あれからガーデンの北と東でスキアの姿が確認されているが、相変わらず様子を見るように距離を置いて動こうとしない。
観察しているのか、後続を待っているのか、時を待っているのか、それとも恐怖を与えるのが目的なのか、はたまたそれ以外の理由なのかは分からなかったが、じきにガーデンは戦場となるのは目に見えていた。
その数日の間に、ヒヅキとエインは頻繁に情報の交換を行っていた。
ヒヅキからは、ガーデン内からスキアを観察した結果や街の様子などを。
エインからは兵士達が調査して得た情報や、王宮内の様子などもあった。しかし、エインは何かと忙しい身であるが故に、専ら情報を持ってくるのはエインの代理人ではあったが。
ここ数日でガーデンの様子は大分変わっていた。
まず、住民が一気に減った。ヒヅキが街を歩いても、がらんとしていて、すれ違う時に肩と肩がぶつかるなどという事は無くなっていた。スキアが近くに攻めてくる前の様子を知っているヒヅキには、まるで遺棄された幽霊都市のように感じられた。
他にも、訪れる商人が少なくなった影響で物流が滞り始めていた。食料に関してはガーデン内でも栽培されている為にどうにかなっているものの、物資が兵士の方に優先的に流されているので、住民は節制の為に少々窮屈な暮らしを送っていた。まだ数日なので自主的な部分が強いものの、このままでは、たとえスキアが攻めて来ずとも弱体化する事だろう。それでも、数年は余裕で保つのだろうが。
その他にも細々としたことが変わってきていたが、それでも数日なので表面化するまでには至っていない。治安も少し悪くなったような気がする程度だ。
シロッカス達は荷物を纏めはしたものの、未だにガーデンに滞在している。まだガーデンでやる事が残っているようだ。
そんな日を過ごしていたヒヅキは、エインから前に招待された屋敷に再度招かれる。
道を覚えていたヒヅキが早速その屋敷を訪れると、玄関で前と同じメイドに出迎えられ、前と同じ部屋に通された。
「すまないな、呼び出してしまって」
部屋に入ったヒヅキに、エインは声を掛ける。
「いえ。殿下自らおいでとは、どうかなさいましたか?」
協力を約束して以来、代理人を通してしか会話をしていなかっただけに、ヒヅキは何か大きな動きでもあったのかと考えた。
「いや。これと言って大きな変化はないのだがね、たまには直接顔を合わせといた方がいいと思っただけだよ」
「そうでしたか」
エインのその答えにヒヅキが頷くと、エインは手振りでヒヅキにソファーを勧める。
ヒヅキは軽く頭を下げると、それに従いソファーに腰を下ろした。