ガーデン防衛6
「まず始めに、すまなかった」
そう言って頭を下げるエイン。
「あそこまで愚かだったとは思いたくはなかった。君がまだガーデンに滞在していてくれたのは幸運だった」
エインは僅かに顔を歪めると、膝の上で手を固く握った。
「それで、何故ああなったんですか?」
ヒヅキはエインに問う。何が、とは明言せずとも、エインが何に対して謝罪しているのかは、ヒヅキでなくとも事情を知っていれば容易に想像がつく。そして、ヒヅキが何を訊きたかっているのかも、エインは理解していた。
「……先に結論を言ってしまえば、第二王子の暴走だ」
「第二王子の暴走?」
「君は王家について、いや私達王位継承者についてどれぐらい知っている?」
「街の噂程度しか」
「そうか」
ヒヅキの答えにエインは一度深く呼吸をすると、話を始めた。
「私達王位継承者は現王の子どもだけではなく、王の兄弟や親戚も含めて有力な者が第一から第三十二まで居る。途中に抜けはあるものの、それだけの数が居るのだが、第一王子が無事に成人を迎え、現在も病気や怪我も無く健康体である為に後継者はほぼ決まったも同然なのだが、第一王子と第二王子の両親である現王とその正妃は子どもに甘かったようで、まだ正式には第一王子を後継者には指名していない。それが原因で第二王子はどうにか王になろうとしていてね」
エインは「私達」 と言ってはいるが、その口調はどこか他人事だった。その考えが顔に出ていたのか、エインは皮肉げな笑みを浮かべる。
「私はね、第三王女と呼ばれているが、第一王子と第二王子が死んだところで私は王位を継げないんだよ。王の子どもは全て正妃の子どもとして扱われるものの、私の実母は一応貴族の出だがあまりに身分が低い為に、その子どもである私の扱いは庶子、いや家臣かよくて重臣の扱いなんだ。まぁ、初めから王位なんて興味も無いのだがね」
エインは小さく笑うと、話を戻す。
「その第二王子は性格に難があってね、お調子者なうえに自己顕示欲の塊なんだよ。だから王になって皆に認められて崇められたいし、周囲に太鼓持ちを置いて、その機嫌取りの言葉にいい気になっている器の小さな男だ。ああそれと、酒色を好んでいたな」
そう言ったエインの顔に薄っすらと浮かんでいたのは、嘲りの笑みであった。
「そしてあの冒険者に無礼を働いた男だが、あれは第一王子の側近ではあるが、第一王子の近くに送り込み、あの場を任せるように仕向けたのは第二王子なんだよ」
「…………」
それにヒヅキは何とも言えない表情になる。あまりにも愚かすぎて。
そんなヒヅキの内心を理解したかのように、エインは苦笑するように小さく笑う。