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ガーデン防衛3

「何かありましたの?」

「ん?」

 サファイアの困惑したような問いに、ヒヅキはどういう意味かと首を傾げた。

「なんかスッキリした感じがするぞー。何か肩の荷でも下りたかー?」

「ああ。少し、気づいたことがありましてね」

「何がだー?」

「そうですね……秘密です」

「そっかー」

 ヒヅキの答えに、シラユリはそう返しながらも、慈愛の滲む微笑みをみせる。その表情は年相応の、年上の包み込むような笑みだった。

「どうやら来たみたいですよ」

 離れた場所に目を向けたヒヅキは、そこがざわつきだしたのを捉えていた。

「やっとかー」

 それに、シラユリは疲れたように呟く。

 そのざわめきを起こした本人は、冒険者たちの先に用意されていた、数段高いお立ち台に上る。

「あれが側近、ね」

 お立ち台に上ったその人物は、小太りに周囲を見下したような尊大そうな目、愛想のないその表情は、わざと冒険者の反感を買っているように見えなくもない。

 肩まで伸びた後ろ髪を気取ったように軽く払うと、その男性は全体を見渡して、鼻で息を吐いた後に口を開いた。

「冒険者の諸君、よくぞ集まったな! 私はこの部隊の指揮官で在らせられる第一王子に指揮を一任された、ヤック・タッタン将軍である。皆にはこれよりガーデン防衛にあたってもらうのだが、その前に現状を説明しておこうか」

 ヤック・タッタン将軍は、ガーデンの現状についての説明を長々と行う。しかし、言葉の量の割に内容はあまりに薄く、スキアが近くまで迫っているという事だけであった。

 その説明を聞きながらも、ヒヅキは周囲の様子に目を配る。

 ヒヅキが確認出来る範囲ではあるが、冒険者の間には一様に怒りを押し殺してるような、息をするのも躊躇われるような重苦しい空気が漂っている。

 それはシラユリやサファイアも同じようで、いつもヒヅキに向けている様な好意的な目ではなく、ゾッとする程に冷たい目をしている。

「――という訳で、現状、ガーデンの戦力は十分なれど、確実にガーデンを防衛してスキアを撃退する為に、冒険者諸君らを召しだしたという訳である」

(召しだした、ね)

 冒険者というモノは強大な力を持ちながらも政治を嫌うだけに、政府にとっては非常に扱いにくい存在であった。それ故に、冒険者を下にみる風潮が国によってはあるとか。

 カーディニア王国の場合、軍部の一部がそういう傾向にあるという話をヒヅキはエインから聞いていたのだが、まさか、わざわざその思想を持っている軍人を冒険者の指揮官代行で寄越すとは予想していなかった。

「ふざけるな!」

 そして、とうとう我慢の限界に達した冒険者の一人が声を上げる。その声を皮切りに、冒険者たちが次々と抗議の声を上げ始める。

「静かにしないか! ……これだから暴れる事しか能のない奴らは」

 黙らせようと声を上げたヤック・タッタン将軍は、続けてそう呟いた。それは本人にとっては独り言のつもりだったのだろうが、それにしては大きな独り言であった。

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