ガーデン防衛
魔砲の練習を終えた翌日。
ヒヅキは早朝に目を覚ますと、朝食をいつもより早めにもらってから、書簡に書いてあった集合場所へと移動する。
集合場所にはヒヅキ以外にも沢山の冒険者が集まっていた。
「あら、やはりヒヅキさんもいらっしゃっいましたのね」
到着したばかりのヒヅキは、聞き覚えのあるその声に顔を向ける。
「おはようございます。サファイアさんも招かれたので?」
「はい。ガーデンに居る冒険者の大半が招待されたと思いますわよ」
サファイアは周囲の冒険者たちへと顔を向ける。
「まだ増えるようですね」
ヒヅキはサファイアが目を向けた先に目を向けると、反対側まで確認するように視線を滑らせる。そこからも冒険者が次々と集まってきている。
「それだけスキアが近づいてきているという事ですわね」
サファイアは普段よりも鋭い目をガーデンの外へと向ける。
「スキアの目的は何なんでしょうね」
「目的、ですか?」
ヒヅキはそれについても探していた為に、ついサファイアにそんな事を問うてしまっていた。
「ええ。現在スキアは集団行動をしているようなので、何かしらの目的があって行動しているのではないかと思いまして」
「なるほど。そう言われましたらそうかもしれませんわね」
ヒヅキの話に、サファイアも黙考する。そんなところに新たな声が掛けられる。
「おぉー! ヒヅッキーだー! また一緒だなー!」
横から掛けられたその声に目を向ければ、そこには幼い少女の様な風体の冒険者の姿があった。
「おはようございます。シラユリさん。また一緒ですね」
周囲の冒険者を器用に避けながら駆け寄ってきたシラユリに、ヒヅキは挨拶をする。
シラユリは、サファイアが見えていないかのように無視してヒヅキを見上げる。
「頼りになる仲間が居るのは嬉しいものだなー」
嬉しそうに笑うシラユリは、見た目通りに幼子の様に見えた。
「シラユリちゃん。私を無視しないでくれない?」
「おっぱいが喋るとは、この世も不思議がいっぱいだなー」
そう言うと、シラユリは「なぁ、ヒヅッキー?」 と問い掛ける。それにヒヅキは困ったような笑みを浮かべる。
「もぅ! シラユリちゃんは相変わらずね!」
サファイアはそれに僅かに頬を膨らませて抗議した。
「仕方ないだろうー。どう見てもその腫れた胸元が邪魔なせいだろうー」
近くに居るサファイアを見上げたシラユリは、視界の大部分を埋めるその物体に、つまらないものでも見るような目を向ける。
「まぁそんな事より、これからよろしくなー。ヒヅッキー」
しかし直ぐに視線をずらしてヒヅキを見上げると、シラユリは可愛らしく微笑んで手を差し出す。それにヒヅキは「こちらこそよろしくお願いします」 と笑ってその手を掴んだ。