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嵐の前の16

「本当に感謝しているのですよ? ルリさんに伺う前に図書館へ行ったのですが、閲覧できるものには大したものは無かったもので」

「それはしょうがない」

「そうね。あそこは一般向けだものね」

「一般向け、ですか?」

 ヒヅキは納得しながらも、そう疑問を口にする。

「そう。図書館は誰でも利用できる。だから情報は限られている」

「そうでしたか」

 図書館でそうだろうと感じていただけに、ヒヅキはルリの言葉に素直に頷いた。

「ですから、ヒヅキさんが冒険者のところを訪ねたのは正解でしたわね」

「伝承しか知らなかったけれど」

 サファイアの言葉に、ルリが小さくそう零した。

「十分ですよ。伝承やお伽噺というものにも真実は眠っているものですから」

 そういった言い伝えの類いからスキアの正体について探っているヒヅキにとっては、伝承や伝説などでも話が聞けたのは十分な収穫であった。

「そう」

 それでもルリにとっては明確な答えが示せなかったのが悔しかったようで、表情はまだ暗いところがあった。

(魔法使いってのは明確な答えを求めるものなのかな?)

 ヒヅキは、図書館で読んだ魔法について書かれた本の一冊に出てきた記述の『魔法使いは真理を追究し、解き明かすのが目的の一つ』 という一文を不意に思い出していた。

「ヒヅキさんは他に疑問はおありですか?」

 サファイアの言葉に、ヒヅキは少し考える間を空ける。

「今日訊きたかった事はすべて聞けたと思います」

「それは良かったですわ」

 サファイアの締めるような声音に、ヒヅキは振り返り、話の間背を向けていた窓の方に目を向ける。そこには陽が暮れる少し前の色の世界が広がっていた。

「もうこんな時間でしたか。本日は色々お世話になりました」

 ヒヅキは立ち上がると、ルリへと頭を下げる。

「また何時でも来て。調べておくから」

 ルリも立ち上がると、そう口にした。

 それに続いてサファイアもルリと別れの挨拶を済ませると、ヒヅキとサファイアはソレイユラルムのギルドを後にする。

「今日は一緒に来ていただき有難うございます」

 その帰り道。ヒヅキはサファイアに礼を告げる。

「勝手についてきただけですわ。それよりも、もう時間も遅いですし、ウチのギルドに寄っていきませんか? 酒場だけではなく、小規模ですが宿屋もしていますのよ?」

 サファイアの提案に、ヒヅキは首を横に振る。

「出るときに帰る事は伝えてありますので。それに、今の時間でしたら、少し急げば晩御飯には何とか間に合いそうですし」

「そうですか。それは残念ですわ」

 サファイアは残念そうにしながらも、そこで大人しく引き下がる。

「では、またいつでもギルドの方へいらしてくださいね。私に会いに来てくださるだけでも嬉しいですので」

「はい。機会がありましたら、また伺わせて頂きます」

 そう言って、ヒヅキはサファイアに笑いかけた。

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