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嵐の前の15

 姿を現したルリに、ヒヅキは挨拶と手土産を渡す。

 その手土産を受け取ったルリは「ありがとう」 と一言礼を言って、受け取ったその手土産を受付の女性に渡した。

 ルリはそのまま受付の女性が手土産を持って奥へと下がったのを確認してから口を開く。

「それで、今日はどうしたの?」

 ヒヅキを見上げながら、そう言ってルリは首を傾げた。

「はい。本日はルリさんに魔法について伺いたく思いまして」

「なるほど」

 ヒヅキの答えにルリは頷くと、幾つもある机の一つに案内する。

 机の一つを三人で囲むと、まずはサファイアとルリがそれぞれ自己紹介を済ませる。

「それにしましても、こんなに可愛いメンバーが居たなんて初めて知りましたわ!」

 サファイアは興奮気味にそう口にする。

「シラユリさんと背丈が似ていますからね」

「ええ! そこも可愛らしいですわ!」

 目をキラキラと輝かせて身を乗り出すサファイアに、ルリはどことなく引いている様子をみせる。

「話を始めても良いですか?」

 そんなサファイアに、ルリは話題を変えようとそう話を振る。

「そ、そうでしたわね!」

 ハッと我に返ると、サファイアは僅かに顔を赤らめながら椅子に座り直す。

「それで、魔法の何が知りたいの?」

 ルリがそう問い掛けたところで、受付の女性がお茶を運んでくる。お茶請けにヒヅキが手土産で持ってきた菓子が添えられていた。

 それにヒヅキとサファイアが礼を言うと、受付の女性は一礼して受付へと戻っていった。

「光の魔法について何かご存知な事があれば教えて欲しいのですが」

 ヒヅキの言葉に、ルリは思い出す様にその可愛らしい頤をついと持ち上げる。

「……ヒヅキさんが扱うような光の魔法については知らない。だけど――」

 そこで言葉を切ると、ルリは少し言いづらそうに続きを口にする。

「ああいった魔法は、伝説や伝承で英雄や勇者とか呼ばれる存在が用いていたような話は聞いたことある……多分」

「多分?」

 ルリの最後の言葉に、ヒヅキは首を傾げた。

「物語では詳しくは語られていない。それに、実際に在った出来事かは不明」

「なるほど。因みに、どんな風に伝わっているのですか?」

「例えば、勇者が魔法を唱えると世界は光に包まれた。や、賢者が杖を掲げると、不浄な者達の只中に光の柱が立ち上った。とか」

「ふむ。光の剣などの武器の描写は?」

「それは、かつて人の復権の為に戦った英雄が光の槍を手にしていた、らしい」

「人の復権?」

「昔、人間種は戦いに敗れて絶滅の危機だったとか」

「他には?」

「光る武器はそれぐらいしか知らない」

「そうですか。サファイアさんは知りませんか?」

 ヒヅキが話を振ると、サファイアは驚いたようにしながらも思い出す素振りをみせる。

「私はあまりお伽噺には興味がないのだけれども、ルリちゃんの話は聞いたことがあるわね。だけれども、残念ながら他の話は知らないわ」

 申し訳なさそうにサファイアは首を横に振る。

「そうですか。他に何か光の魔法で思い当たる事はありませんか?」

 ヒヅキは、ルリとサファイアの顔を交互に見遣り、そう問い掛ける。

「光る武器も、この前の爆発も、さっきの話以外では思いつかない。光の魔法自体が神聖さの表れの様に扱われているから、ほとんどが何かをして光ったという描写ばかりだから」

「私も知りませんわね。……ああ、光の剣といえば、手にしている剣が輝いた。という戦士の話なら聞いたことがありましたわね」

「どんな話ですか?」

「確か、魔族との戦闘中に手にしていた剣が輝きだした。というモノで、魔法かどうかは微妙な所ですわね。その光も戦闘に勝利したら直ぐに消えたらしいですし」

「そう、ですか」

 おそらくそれはヒヅキの求めているモノではないのだろうが、ヒヅキは僅かに興味が湧いた。しかし、直ぐにルリが言葉を発する。

「その戦士は後に英雄に祭り上げられているから、おそらくそれは権威付けでしかない」

「そうなんですの?」

 それにルリは頷く。

「その戦士は救国の英雄にして、後に王になったと伝わっている」

「そういう事でしたの」

 ルリの話に、サファイアは肩を竦める。それだけの肩書があれば、崇められていてもおかしくはないだろう。

「では、他には無いのですか?」

「私の知る限りでは」

「私もですわ」

「そうですか。ルリさん、サファイアさん、本日は貴重なお話をありがとうございます」

 ヒヅキは感謝を込めて二人に頭を下げる。

「力になれなかった」

 それに、ルリは小さくそう口にする。

「いえ、大変参考になりました」

「だったらよかった」

 そうは言うものの、ルリの表情は申し訳なさそうなままであった。

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