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嵐の前の13

 それからもヒヅキとサファイアは雑談しながらカトーの帰りを待っていると、もうすぐ昼も過ぎようかという時間になって、やっとカトーはギルドに帰ってきた。

「おや? サファイアさんにヒヅキさんではありませんか!?」

 建物の中に入ってきたカトーは、そう驚きを口にする。

「帰ってきましたわね」

 カトーの姿を確認したサファイアは立ち上がると、カトーに会釈する。ヒヅキも立ち上がり、サファイアに続いて頭を下げた。

「御久しぶりですわね。カトーさん」

「あの護衛任務依頼ですね。ヒヅキさんも無事に帰ってこられたようで、よかったです」

 カトーは二人に近づく。

「今日はどうされたのですか?」

 手振りで椅子を勧めながらのカトーの問いに、ヒヅキが答える。

「帰還のご報告に来ました」

「そうでしたか。わざわざありがとうございます」

 カトーが頭を下げると、三人は席に着いた。

「お土産を頂きましたので、どうぞ」

 そのタイミングで、受付の男性が三人の前にヒヅキが持ってきた手土産の菓子と温かいお茶を置いた。その代りに、ヒヅキとサファイアの空になっていた湯呑を回収すると、奥へと下がっていった。

「わざわざ土産まで。お気を遣わせてしまいました」

「いえいえ。私が勝手に持ってきた物ですので」

 恐縮するように頭を下げたカトーに、ヒヅキは手ぶりでその必要が無い事を告げる。

「それにしましても、所用は終わったんですの?」

 サファイアの問いに、カトーは頷く。

「はい。簡単な依頼のようなものでしたから」

「依頼のようなもの?」

「知り合いの頼み、みたいなものです」

 そう言うと、少し疲れたようにカトーは肩を竦めた。

「それはそうと、お二人はこれからいかがされるのですか?」

「私は今日はもう用はありませんわね。後はギルドに戻って御手伝いかしら」

「ああ、サファイアさんのギルドは酒場を営んでおりましたな」

「ええ。中々好評なんですよ。サービスしますから、カトーさんもいらしてくださいな」

「はは。私は酒には弱いもので。それで、ヒヅキさんは?」

「これからソレイユラルムのギルドを訪ねるつもりです」

「おや、お知り合いでも?」

「ええ。少々縁がありまして」

「そうでしたか」

 ヒヅキの話にカトーが相づちを打つと。

「では、遅くならないうちに行きましょう!」

 立ち上がったサファイアがヒヅキの腕を掴む。

「サファイアさんもソレイユラルムにお知り合いが?」

「いえ。前に一緒に依頼をこなした事ぐらいはありますが、知り合いは居ませんわね」

「では?」

「ヒヅキさんについて行くのですわ!」

「……なるほど」

 ヒヅキは少し考え、出されたお茶と菓子を口に入れる。

「ああ、そうでしたわね。私としたことが、全く手を付けずに残してしまっては失礼でしたわね」

 そう言うと、サファイアも座って菓子を口にする。

「美味しいですわね。この御菓子」

 菓子の甘さに頬を緩めるサファイアに、ヒヅキは菓子が売っていた店を教えつつ、しっかり味わってお茶と菓子を平らげたのだった。

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