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嵐の前の

 シロッカス邸に到着したヒヅキは、シンビに出迎えられる。

「お帰りなさいませヒヅキさま」

 そのシンビの後ろにはアイリスとシロッカスの姿があった。

「えっと、ただいま戻りました」

 それにヒヅキが困惑しながらもそう返すと、アイリスはヒヅキに飛び掛かってくる。

「ご無事で何よりですわ!」

 それを受け止めたヒヅキを見上げると、アイリスは嬉しそうな笑顔でそう告げる。

 その事に驚いているヒヅキに向けて、シロッカスが話しかける。

「エイン殿下が無事に戻ってきたと報せがあったのでな、こうして君を待っていたのだよ」

「それは、遅くなりました」

 ヒヅキは軽く頭を下げる。そんなヒヅキにシロッカスは首を横に振る。

「構わないさ。むしろ、私の無茶な依頼を果たしてくれて感謝しているぐらいだよ」

 感謝の言葉と共にヒヅキに頭を下げるシロッカス。

「ヒヅキさん! 今回の御仕事の御話を御聞かせ願えませんか!?」

「お嬢様。ヒヅキさまは帰ったばかりでお疲れでしょうから、まずは身体を休めていただく方が先決ではありませんか?」

「そうでしたわ! 私ったら、申し訳ありません。ヒヅキさん」

 シンビに窘められて慌ててヒヅキから離れたアイリスは、数歩離れて綺麗な所作で頭を下げる。

「いえ、お気になさらずに。でも、汚れていますので、せめて着替えぐらいはさせてください」

「お風呂の御用意は済んでおります」

「使っても宜しいんですか?」

「ヒヅキさまの為に沸かしたお湯ですので、存分にご堪能下さい」

「では、お言葉に甘えさせていただきます」

 シンビの言葉に、ヒヅキはまず家主のシロッカスに礼を言う。その後にアイリス、シンビの順に頭を下げた。

「今回は本当に感謝している。好きなだけ浸かるといい」

 そう言って道を開けるように身体を横向きにするシロッカス。

 ヒヅキは会釈しながらその横を通ると、まずは荷物を置いて着替えを用意する為に、ガーデン滞在中に貸してもらっている自室へと移動する。

 部屋は相変わらず綺麗にしてはあったが、ヒヅキが出た時とほとんど同じ状態のままであった。

 ヒヅキは僅かな手荷物を床に置くと、持っていった荷物とは別に部屋に置いておいた着替えの服を取り出し、シロッカスの厚意に甘えて湯浴みをする為に部屋を出る。

 ヒヅキが綺麗な白い石の廊下を珍しく独りで歩いて移動すると、一つの扉の前で立ち止まる。その扉は一本の木から削り出された板をそのまま扉にしたもので、木のいい匂いが未だに微かに香っている。

 その扉を開けると、広い脱衣所に繋がっている。そこで服を脱ぐと、浴場へ続く引き戸を開ける。そこに広がるのは、いつ見ても大きくて立派な風呂であった。ただ、無駄な装飾の類いは見当たらない。

 ヒヅキは手慣れた動作で身体の汚れを落とすと、大きな浴槽に張られていた湯につかる。久方ぶりの風呂は身体の疲れが湯に溶け出るようで、思わずヒヅキは長い息を吐いたのだった。

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