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仕事46

 それからしばらくの間夜空を眺めていたエインは、陣営に戻る為にヒヅキに声を掛ける。

「長々と待たせてすまなかったな。陣営に戻ろうか」

 エインの言葉にヒヅキは頷くと、先にエインを行かせ、その後をついて行く。

「……そんなに離れなくてもいいのだが?」

 五メートルほどの距離を開けて後をついてくるヒヅキに、エインは困ったようにそう口にする。

「いえ、何があるか分かりませんので、このぐらいの距離の方が動きやすいのです」

「そう、なのか?」

 ヒヅキの返答にエインは真偽が分からずそう疑問を口にする。

「ええ、視界が広く取れるのでこの方がいいのです」

 当然とばかりに堂々としたヒヅキの口調に、エインはそんなものなのかと前を向く。

「…………」

「…………」

 特に言葉を発さないまま二人は歩く。

 エインは少し気まずい思いを抱きながらも、陣営に到着するまでヒヅキと共に無言のまま歩いた。



 陣営に到着後。エインと別れたヒヅキは、再度同じ場所まで戻ってきていた。

「……面倒なものだ」

 先程までの事を思い出し、ヒヅキはわざとらしく息を吐いた。

 ヒヅキのエインの印象は油断ならない相手だった。正直まだルリとの会話の方が安心して行える程。

 緊急時以外はあまり会話をしたくなかった為に、帰りも必要以上に距離を取っていた。

「明日はガーデンだけど、いつになったらエルフの国に行けるのかね」

 ヒヅキはこれが終わった後はエルフの国へ赴こうと考えていた。それは、かつての約束を果たす為に。

「思い出したのは最近だけど……あの子はまだ生きてるのかな?」

 ヒヅキは、幼い頃にエルフの国に行った際に出会った少女の事を思い出す。その子は、エルフ国のとある街の端の方で誰も寄せ付けない雰囲気を醸し出して座っていた、今にも餓死しそうなその少女ではあったが、ヒヅキが1年近くかけて親しくなった後、別れる際には多少は元気になっていた。その時に、ヒヅキは母親の形見であるネックレスを次に会う際に返してもらうという再会の約束と共に少女に託していた。

 その約束を果たし、渡したそのネックレスを返してもらう為に、ヒヅキは約10年ぶりにエルフの国を訪れるつもりでいた。

「……その前に、俺は生き残れるのかね」

 その為にはこれから行われるであろうスキアとの戦いを生き残らなければ意味が無い為に、ヒヅキは改めて決意と共に気を引き締める。

 そうした後に一度深呼吸をして冷気を体内に取り込む。

「よし、戻るか!」

 ヒヅキはそう言葉にすると、陣営に戻る。

 そのまま陣営で翌朝まで不寝番の兵士達と語り合いながら、周辺警戒の任に就いたのだった。

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