仕事42
ルリとの会話を終えたヒヅキが一息つくと、ちょうどエイン達が帰ってくる。
帰ってきたエインは兵士と冒険者を集めて、今後について口にする。
「さて、まずは今日の宿は提供してもらえることになった。これから案内してもらうから、話が終わったら皆ついてくるように」
そう言うと、エインは少し離れた場所に立つこの砦の兵士に一度目をやる。
「そして、明日からだが。大した休憩を与えられずに申し訳ないが、ガーデンへ向けて発とうと思っているので、そのつもりでいるように」
エインは兵士と冒険者の顔を確認するように見渡すと、伝わった事を確認してから一つ大きく頷いた。
「それでは宿舎へ移動するので、片付け等があるのなら急いで取り掛かれ!」
エインのその言葉に、一部の兵士と冒険者が動き出す。その中にはヒヅキの姿もあった。
包帯や薬などの医療品に、マットや折り畳みの椅子などの雑品を急いで回収すると、それを持って元の位置に戻る。
「準備は出来たか? それでは移動を開始するぞ」
エインの号令の下、一行は移動を開始する。
砦側が用意した宿舎はそう離れていない場所にあった。
二階建てで木造の古めかしいその宿舎は、どこかの街の宿屋の様に見えた。それが六棟固まって建っているその場所に、兵士と冒険者たちは分かれて入っていく。
ヒヅキは一番奥、砦の入り口方向の宿舎に案内される。ヒヅキの他は冒険者が二人と後は全て兵士だけ。
宿舎の中は、玄関を入って直ぐ左右に分かれており、少し歩いた場所に二階へと続く階段が左右共に設置されている。
ヒヅキ達は二手に分かれると、中に居た兵士達に案内されて移動を開始する。
ミシミシと小さく軋む廊下を慎重に歩きながら進むと、一階の少し狭い個室がヒヅキに宛がわれた。
ヒヅキが室内に入ると、残りの兵士を連れて一行は次の部屋へと移動する。
「ケスエン砦の宿舎よりは広いな」
室内にはベッドと小さな机に簡易的な椅子が一脚在り、後は採光用の窓があるだけだった。
「……寝ようかな」
まだ夕方頃ではあったが、ヒヅキはそう決めると、一度ヒヅキが宛がわれた宿舎の責任者に任命された兵士の部屋へと向かい、明日までの予定を確認する。幸いこのあと直ぐに用意されている夕食を頂くだけらしく、ヒヅキは礼を言って退室すると、夕食後に眠る事を決める。
夕食は本当に直ぐだったらしく、ヒヅキが部屋に戻った直後に夕食へと呼ばれた。
砦側が用意した夕食は、ジャガイモが大量に入ったスープだけだった。味は少々塩辛かったが、どうやら塩蔵した魚を味付けとしてそのまま使っているらしく、塩抜きが足りていなかったのか、その魚もまだ少しだけ塩辛かった。
そんな夕食を早々に終えたヒヅキは、部屋に戻り一息つくと、ベッドに横になり眠りに就いたのだった。




