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仕事40

 砦に入るとそこは大きな建物が建ち並び、兵士だけではなく町人のような格好の者達の姿も目に出来る。

 中央には大きな広場があり、そこには商店や芸人の姿が見て取れた。

 エイン達は砦の奥側、ガーデンが在る方角に建っている司令部がある建物の前まで案内されると、エインをはじめとした主要な人物が建物内に案内され、ヒヅキ達は近くの空き地に案内される。

 エイン達が戻るまでの間、ヒヅキは包帯を変えるなどの治療の手伝いを行う。

(それにしても、俺はいつまで一緒に行動すればいいのか……)

 ヒヅキは手伝いながら、今後の行動について考える。報酬の通行手形を考えるとガーデンまでなのかもしれないが、もしもエインがここで足を止めるというのであれば、援護するという依頼は達せられたと判断して、ヒヅキは先にガーデンへと帰るつもりでいた。

「久しぶり。少し雰囲気が変わった」

 ヒヅキがそんな事を考えながら治療の手伝いや雑用をこなしていると、横からそんな言葉を掛けられる。ヒヅキがその声がした方へと顔を向けると、そこには背の低い青髪童顔の少女がヒヅキを見上げるようにして立っていた。

「お久しぶりです。……ルリさん」

 その青髪の少女の名前を一瞬忘れたものの、ヒヅキは何とか思い出す。瞬き一つ分程のその間はそこまで不自然ではなかったはずだったが、ルリはその澄んだ湖面の様な瞳でヒヅキを捉えながら僅かに首を傾げた。

「名前、思い出せてよかった」

 それにヒヅキは苦笑い気味に小さく笑う。

「それで、雰囲気が変わったとは? そこまで変わりましたか?」

 ヒヅキの疑問に、ルリは頷く。

「体内の魔力の流れが変わった。行き場を探していた魔力に行き場が見つかった……何があったの?」

 ルリの無垢な瞳に好奇の光が宿る。表情は乏しいが、それでも興味津々なのが判る。それに、ヒヅキの記憶では、ルリの口数がここまで多いのも珍しい。

「何がって、まぁ色々と……」

 それにヒヅキはそう言葉を濁す。というよりも、ヒヅキ自身何があったのかよく分かっていなかった。

「貴方の中の誰かが目を覚ました?」

「……それはどういう意味で?」

 突然の問いに、ヒヅキは出来るだけ同じ口調を心がけて問い掛ける。しかし、言葉の端に内心の警戒が微量ににじみ出ていた。

「以前から貴方の中に貴方ではない誰かの存在を感じていた。だけど、今はそれが貴方と混ざっている様に思えたから」

「なるほど……」

 そう頷きながらも、ヒヅキはルリに対しての警戒心を上げる。

(冒険者というものにそこまで明るくはないが、全員がそこまで判るものなのか?)

 そう考えはしたものの、今まで出会った他の冒険者にはそんな素振りはなかったかと思い直す。ならば、ルリが特別なのだろう。

「……ただ気になっただけ」

「え?」

 ヒヅキが思考を回転させていると、不意にルリがそう呟いた。

「だから、そう構えなくていい」

 それだけ言うと、ルリはまるで謝るようにヒヅキに頭を下げる。

「……そうですか」

 それにヒヅキは表面上では警戒心を解くが、それでも内心では警戒を続ける。前に少し一緒に旅をした仲とはいえ、それで完全に信用は出来なかった。

「こちらこそ、気分を害してしまったのでしたら申し訳ありません」

 ヒヅキも謝罪の意味を込めてルリに頭を下げる。僅かでも内心の警戒を表面に出してしまった未熟な自分を恥じながら。

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