仕事36
何事も無く立ち上がったヒヅキを目にした、エインを含む一部始終を目にしていた周囲の兵士達は、何が起こったのか理解が出来ずに言葉を失う。
「さて、それじゃ始めますか」
そんな周囲など気にすることなく、ヒヅキは光の剣を発現させると、次の攻撃を行おうとしている眼前の植物型のスキアとの距離を一瞬で詰め、その移動の勢いを乗せた一刀にてスキアを斬り倒した。
「ふむ。問題なく身体も動くし、力も使えるな」
その事実を確認して、ヒヅキは改めてあのよく分からない声の正体が気になった。そもそもこの力がどこから湧いて出てきているのかすら理解できていない。
「次は魔砲でも試してみるかな」
気になる事は色々とあるものの、まずは新たに得た力を確認する必要があるだろうと考えたヒヅキは、頭を切り換える。
「狙いをどこにするか」
襲ってくるスキアを返り討ちにしながら、ヒヅキは周囲を見渡す。大量のスキアで埋め尽くされているものの、魔砲の撃てる回数は決まっている為に、効果的に倒せる場所の選定を行う。それに、近すぎては人的被害も出てしまう。
「砦側から流れてくるのを狙おうかな」
ケスエン砦を落としたスキアの一部が、ヒヅキ達を襲撃する為に群がって来ていた。その数は他の方角のスキアよりも多く、今の内に分断しておかなければ更にケスエン砦側から流れてきて増えそうな気配があった。
ヒヅキはケスエン砦方面へと狙いを定めると、意識を集中させる為にまずは周囲に居るスキアの数を減らす。
それが済むと、一旦光の剣を収め、威力を調節しながら魔砲の弾を生成する。
「実際の威力はどれほどのものか」
ヒヅキは目を覚ました時に魔砲の威力や効果範囲については理解してはいたが、実際に確認するのは初めての為に、少し緊張しながら準備の出来た魔砲を目的地点へと放つ。
その効果は絶大であった。
狙い通りの地点に着弾した魔砲は、太陽が落ちて来たかのような強烈な閃光を伴った爆裂で、その場に居たスキア百強程を一瞬で全て消し去った。
音はあまりしなかったものの、それだけのスキアを一瞬で消し去りながら、ヒヅキには爆裂の規模はまだまだ余裕があった様にみえた。
「これ、まだ威力調整しないと駄目みたいだな」
その結果に、ヒヅキは軽く引きながらそう結論付けた。おそらく今の半分程の威力でも十分な戦果が上げられる事だろう。殲滅するにしても七割ぐらいでも十分過ぎたかもしれない。その調整が上手くいけば魔力の節約になり、必然的に放出可能な魔砲の弾が増えるという事にも繋がる為、ヒヅキは後でどこか場所を探して極小規模で訓練しておこうと決心するのだった。