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仕事31

「それにしても君には欲がないな」

 供の男性が離れていったのを確認したエインは、ヒヅキに目を向けて呆れたようにそう口にした。

「そうですか?」

 それにヒヅキは不思議そうに首を傾げる。大した褒賞を貰わなかったのは、大層な報酬を貰ってしまった方が面倒くさいという身勝手な考えから導き出された答えに過ぎない。

「ああ、そうだとも。何でも好きなモノを与えると言われて欲したのが通行手形だけとは。私はそんなに魅力がないかな?」

 エインは冗談めかしてヒヅキにそう問い掛ける。

「いえ、殿下はとても魅力的過ぎて私なぞには勿体ない御方かと」

 特に慌てる事もなく、ヒヅキは真顔で平然とそう言い放つ。

「ハハハ。そうか、ならば良かった。だが私個人としては、褒賞を抜きにしても君にならこの身を任せてもいいと本気で思っているんだがね」

「またお戯れを」

「戯れではないさ。王族というのが邪魔ならば捨てたっていい。どうせどこぞの貴族にでも嫁がされる身だ、政治の道具になるぐらいなら君を着飾る装飾の一つになった方が遥かにマシさ」

 何かを思い出したのか、エインはどこか苦々しさを含む皮肉げな暗い笑みを浮かべる。

「私なぞの傍では殿下がくすんでしまいましょう。それに、殿下でしたら嫁ぎ先の貴族を上手に操縦されそうですが」

 対するヒヅキの表情は大して変わらないものの、肩を竦めて冗談っぽい口調でそう口にする。

「そんな面白い君だから興味があるんだがね。どうだい? もう一度考えてみては? 私は意中の相手には結構尽くす方だと思うよ」

「それはとても魅力的な御提案ですが、やはり辞退させて頂きます」

「そうか……しかし、通行手形を貰って君はどこの国へ向かうつもりだい?」

「エルフの国へ向かおうかと」

「南か……エルフの国には知り合いでも居るのかい?」

「ちょっとした顔見知り程度ですが」

「そうか。まぁエルフとは良好な関係を維持してはいるが、今回の事でどう変化するかは分からないから、その時は気を付けてくれ給え。君は我が国の貴重な人材なのだからな」

「畏まりました」

 ヒヅキは深々と一礼する。

「まぁ君ならば大抵の事は問題なく切り抜けそうではあるがね。さて、君との有意義な話をまだ続けたいところではあるが、どうやら時間がきたようだ」

 そう言ってエインはヒヅキの後ろの方へと意識を向ける。エインのその目線の先を追ってヒヅキも顔だけで後ろを振り向くと、そこには反対側に去っていったはずのエインの御付きの男性が駆け寄ってくる姿があった。

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