仕事23
「ヒヅキさん!」
スキアが消滅すると、サファイアが驚愕の響きを乗せてヒヅキの名を呼ぶ。
「ご無事ですか? サファイアさん」
ヒヅキはシラユリの時同様にサファイアに駆け寄ると、怪我をしてないか目視で確認する。
「ええ、攻撃の余波で跳んできた小石で出来た擦り傷程度はありますが、スキアの攻撃は直撃していませんので大丈夫ですわ」
サファイアの言葉通り、手足には細かい擦り傷は見受けられるものの、今すぐ対処しなければならないような大怪我は勿論のこと、怪我と呼べるようなものすらなかった。
「よかったです。それでは一度皆さんと合流しましょう。シラユリさんは先に下がってもらいましたので」
安堵しつつヒヅキがそう告げると、サファイアは頷く。
「せっかくの二人きりですのに、まだスキアが近くに居るのでのんびり出来ないのが残念ですわ」
サファイアが冗談っぽくそう言って肩をすくめると、ヒヅキとサファイアは揃って移動を始め、人足の人たちと合流する。
「おかえりー」
二人が合流すると、カトーから治療を受けているシラユリがそう言って迎えてくれる。
「ただいまです。どうですか、怪我の具合は?」
ヒヅキの問いに、シラユリは恥ずかしそうにしながら自分の左腕に目を向ける。
それに合わせてヒヅキもそちらに目を向ければ、そこには外見的には普通の左腕があった。
「見ての通り見た目だけは治ったけど、中身はまだぐちゃぐちゃのままさー」
にゃははと、シラユリは力なく小さく笑う。
それを見てヒヅキは心配そうな深刻な顔を僅かにみせる。それを見たシラユリは、問題ないとばかりの笑顔をヒヅキに向けた。
「このままカトーの治癒魔法を受けてれば治るから、そんなに心配しなくても大丈夫だよー」
「そう、ですか」
「うん。カトーは治癒魔法が得意だからなー」
それを聞いて、ヒヅキは少し気を緩める。
「それより、おっぱいは大丈夫だったみたいだなー」
「ええ、勿論ですわ!」
シラユリのその言葉に、サファイアは先ほどまで心配そうにしていた顔などなかったかのような自信に満ちた顔をみせる。
「そっかー。それはよかったなー」
「ええ。シラユリちゃんは少々緩みすぎなのではなくて?」
「むむ! おっぱいは一体相手で私は二体だったろー」
「さぁ、どうだったかしら」
「その若さでとうとう呆けたかー」
ワイのワイのと言い合うシラユリとサファイアの姿を眺めながら、ヒヅキはやっと理解する。これが二人流の交流なのだろうと。
(仲がいいんだな)
何だかんだと言い合いながらも仲良しな二人に気づき、ヒヅキは生暖かい笑みを浮かべたのであった。