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幕引きと幕開け21

 世界の改変には時間が掛かった。その間集中していたエルフは、世界の改変が終わると疲れたように息を吐き出す。

「終わりましたか?」

 その様子を眺めていた女性に、エルフは頷きを返す。

「終わった。後は回収した魂を基にして新たに生き物を生み出すだけ」

「左様ですか」

「それと、ここが新しい君の寝床だ」

 そう言うと、エルフは女性の脳内に直接場所の情報を送り込む。

 女性はそれを基に、記憶にある地図と照らし合わせておおよその場所を把握した。

「感謝致します」

「なに、また不便を掛ける」

「眠るだけですから」

 エルフの申し訳なさそうな物言いに、女性は困ったような呆れたような声音でそう返す。

 実際、女性は眠るだけなので、感覚的には次に起きるまでは一瞬だ。たとえそれが封印だろうとも、次に目が覚める保証が無かろうとも関係ない。それ以前に、今更な話でもあった。

 そんな女性の心情を察したエルフは、一瞬だけ目を伏せる。

「そうか。次こそ上手く回るようにするさ」

「あまり無理をなさいませんように。それでは、私は先に眠りにつかせていただきます」

「……ああ。おやすみ」

 頭を下げた女性に、エルフは僅かに間を置いて頷き返す。

 それを確認した女性は、長剣を手にしたまま消えていった。

 先代の神の領域だった空間も、現在では既にエルフが掌握していたので、元の世界とは直接繋がっていた。

 それを見送ったエルフは、大きく息を吐き出す。

「はぁ。神という立場も楽じゃないね。ひとつの失敗だけでここまで事が大きくなってしまうのだから」

 新しい生命を元の世界に誕生させる用意をしながら、エルフは今までを振り返ると、周囲に誰も居ないので陰鬱な声音でそう零す。

 神という存在はとにかく力が大きい。人が全力でこぶしを叩きつけても壊れない岩だろうとも、蝋燭の火を吹き消すぐらい手軽に破壊出来てしまうほど圧倒的に。

 それほどに大きな力が振るわれるのだから、その結果もまた大きな跡を残すのは必定。それが良い結果であればいいのだが、悪い結果だと大変な事になる。

 それだけに、神に失敗は許されない。とはいえ、完全に未来が視える訳でもないのだから、失敗しないなど不可能な話ではあるが。

 そして、その失敗の結果が先代の神へと続いていた。失敗は初めてではなかったが、今回に限って言えば大失敗と言えるのかもしれない。

「だからこそ、今回は慎重に運営していかなければ。……基本的に見守る事にして、あまり手を出さない方がいいかな」

 エルフは少し考えた後、そう結論を出す。

 力を振るう機会を減らせば、自然と失敗する回数も減るだろう。それにあまり積極的に関わらなければ、単独での管理でも大分仕事が軽減されるだろう。

 そういった事を決めたところで、元の世界の下地が整う。

「さて、それじゃ最初はしっかりと手を加えて万全にしておかなければ」

 先代の神が構築した世界を分解したエルフはそのまま元の世界に戻ると、誕生させた生命が自力で生きていけるまで手を貸しつつ、世界がより安定するように手を加えていった。

「新しい時代の幕開け。今度こそ、失敗しないようにしないとな」

 その言葉は誰に聞かれるでもなく、虚空に消えていったのだった。

これにて村人Aが見る異世界は完結です。

次作は少し書いていますが、少し休憩します。

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