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幕引きと幕開け20

 エルフが女性と今後について少し言葉を交わしている内に確認作業が終わる。

「あちらの世界は全滅か。かなり徹底的にやったようだ。その代り、こちらに存在している魂の数がもの凄い数に上っているが……これは今まで溜めていた分もあるな」

 現状の確認を終えたエルフは一旦全ての魂を回収し、せっかくやり直すならばと元の世界にも手を加えていく。

「君が安心して眠れる場所も造っておこう」

「ありがとうございます」

 エルフの言葉に、女性は丁寧に頭を下げる。

 その間も神と呼ばれるだけの力で以って世界の改変は行われていくが、まだまだ時間が掛かりそうだった。

「それにしても、長いようで短い旅だったな」

「はい」

 永き時を存在し、寿命というモノが存在しない神にとっては、10年だろうと100年だろうと1000年だろうと僅かな時でしかない。それだけに、今代の神いや先代の神が君臨していた期間というのは、エルフの姿の神にとってはあまり長くは感じていなかった。

「全てを負わせてしまった彼には申し訳ない事をしてしまった」

「そう、ですね……」

 女性も全てを把握している訳ではない。それでもヒヅキが犠牲になったというのは理解していた。それは先代の神の遊戯での犠牲ではなく、世界を元に戻す為の明確な犠牲。

 先代の神に翻弄された者は大量に存在しているが、その中でも唯一、最初からそうある事を望まれて誕生したのはヒヅキだけだっただろう。

「彼は死によって完全に消滅してしまった。役割を考えればそうなってもおかしくはないのだろうが、完全に消滅してしまったので蘇らせる事は不可能だ。なので、せめて彼が歩んだ道が無駄ではなかったと証明出来るように努めようと思う」

「微力ながら、私もお力添えいたします」

「ああ、頼んだ」

「はい」

 エルフの言葉に女性が頷くと、その場に静寂が訪れる。

 他には何も存在しない世界だけに、ただただ静かだった。エルフはその中でも作業を続けているが、世界を一から創り直す訳ではないとはいえ、やはり時間が掛かる。

 女性はしばらくエルフの姿を視界に捉えていたが、ふいに視線を動かすと、それを窪地へと向ける。

「………………」

 それで中心から少し離れた場所に1本の長剣を見つけた女性は、誘われるように窪地を下りていった。

 その長剣は、女性がヒヅキに渡した長剣であった。他の荷物はヒヅキの遺体と共に吸収されたようだが、それだけは吸収されずに残されていた。

(これは元々あの方の持ち物だったからですかね?)

 長剣を手にした女性は、エルフの方に顔を向ける。窪地の中からなので直接姿は見えないが。

 その長剣の本来の所有者は、エルフの姿をした神。いや、正確にはその分身みたいな存在だろうか。

 かつて女性が共に旅した存在。そして世界の為に戦い、その時代の神に存在を抹消された存在。長剣は、そんな存在が残した数少ない持ち物だった。

 それから、女性がその方がいいと判断してヒヅキに託したが、結局こうして戻ってきてしまった。呪われたという訳ではないが、どちらも最期は犠牲になったのは変わらない。

 それを手にした女性は一瞬だけ悲しげに目を細めるも、小さく首を振って気持ちを切り替えると、その長剣を回収して窪地から外に出たのだった。

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