表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1507/1509

幕引きと幕開け19

 窪みから外に出たエルフへと女性は近づくと、恭しく頭を下げる。

「ご無沙汰しております。無事の御復活お慶び申し上げます」

「彼を通しては観ていたけれど、こうして対面で話すのは久しぶりだね。元気そうで何よりだよ」

 苦笑するような声音で女性に返事をすると、エルフは人造神の方に顔を向ける。

 しかし、何か言いたそうな顔を浮かべるも、何と言っていいか分からないのかエルフは開いた口を閉じた。

 そんなエルフの姿を僅かな間眺めていた人造神は、浮遊して滑るように近づく。

「問題なく復活した。中身も問題ない。ならば今度こそしっかりと管理するといい。今更気遣いなど気持ちが悪いだけ」

「……そうか。出来れば君にも手伝ってほしいのだけれども?」

「断る。本来私のような存在は許されない。過去の事とはいえ、それを許容したお前を私は許さない。それどころか、私の力を利用したのだから許せるはずもない。それに、あれはお前の背負うべき罪であって、私は関係ない」

「…………では、これからどうするつもりで?」

「役目は果たした。だから消えるとも。お前は永劫その役目に囚われるといい」

 事務的に淡々とそう告げると、人造神は一瞬で消えてしまった。その間際、クロスの方へと視線を向けたような気がした。

「言われなくともそうするつもりですよ」

 小さく肩を竦めると、エルフはクロスの方へと顔を向ける。

「それで? 君はどうするのですか?」

「どうやら私はお咎め無しのようなので、大人しくこのまま消えますよ。ヒヅキ様が居られないのであれば、もうこの世界に興味もありませんし」

「ああ、君は彼の鋭敏な感覚を崇拝していたね。どうやら生前から変わっていないようで」

「今はこんな見た目ですが、元々は結構長く生きていましたからね。死んだぐらいじゃ性格なんてそう変わりませんよ」

 僅かに皮肉げにそう告げると、クロスはエルフへ慇懃に礼をして消えていった。

(今となって考えれば、彼のあのおそろしいまでの感覚の鋭敏さは当然だったのでしょうね)

 もしも本当にヒヅキは世界が望んで生み出した存在だとしたら、ヒヅキ自身が世界と繋がっていてもおかしくはない。世界も魔力や魔素も創造したのは神ではあるが、それを司っているのは世界そのもの。神はあくまでもその世界が壊れないように管理しているだけ。

 であれば、世界の領分である魔力や魔素に鋭敏な感覚を持っているというのも、世界が生み出した存在だと考えれば合点がいく。

 そこまで考えたエルフは、今更だなと内心で苦笑した。そのヒヅキは役目を終えて永久の眠りについたのだから。

(そう思えば、よく役目を果たせたものですね)

 ヒヅキを通して世界を観ていたエルフである。であるからして、ヒヅキが今まで何をしてきたかはおおよそ理解していた。だからこそ、知らぬ間に背負わされていた役割を無意識にでも達成したヒヅキに、エルフは密かに感嘆した。

 人造神とクロスが消えた事で、残るはエルフと女性のみ。現在居る世界は、毒物となっていた今代の神が消失した事で崩壊を免れている。

 とはいえ放置も出来ないので、この世界は壊さなければならないだろう。

 その為にもまずは元の世界の確認と、こちらの世界で保管していた魂の確認をしなければならない。

「それで、君はどうする?」

 確認作業を行いながら、エルフは残っていた女性に問い掛ける。

 その質問に女性は少し考えた後、

「世界を旅するにしても時間を置いた方がよさそうなので、また眠りにでもつこうかと」

「そうか」

 女性のその答えにエルフは頷く。意思を尊重するというよりも、それが最適であるのはエルフにも理解出来たから。

 今回の件で世界はやり直さなければならない。何もはじめからという訳ではないが、それでも文明は大分後退する事だろう。

 そんな世界では女性は先に進み過ぎていて、明らかに浮いた存在となってしまう。今後それが騒動の種になりかねないので、ある程度文明が育つまでは表舞台に立たない方が賢明だろうという判断だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ