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幕引きと幕開け15

 人造神の話を聞いた後、ヒヅキは再び思考する。

 もしも人造神の話通りの世界であれば、その世界を管理していた神というのは本当に世界に興味が無かったのだろう。

 だからといって管理していなかった訳ではないのだろうが、それでも人が神を造るという、本来であれば気宇壮大というよりも妄想と言えるような領域の、しかし実際に到達してしまった出来事さえ放置していたほどだ。

 ヒヅキの目の前にこうして人造神が存在している以上、完成まで何の介入もしなかったという事に他ならない。神の介入ともなれば、まず人造神など完成しないだろうから。

 という事は、同じ神でも今代の神とは考え方が違うという事だろうが、そういった神であるならば、居ても居なくても同じとも言える。もっとも、人が知覚出来ない部分で管理しているという可能性も大いにあるだろうが。

 その頃とは性格は変わっているだろうと人造神は言うが、それは確実とは言えない。確かにヒヅキの中の声の主からは、人造神の話に出てくる神のような無機質な印象は受けないが、それでも今代の神を吸収すると考えると参考になるかは微妙なところ。

 もっとも、完全にその性格が消滅するとは限らないので、人造神の言葉も間違ってはいないのだろうが。

 そういった事を踏まえて、ヒヅキはさてどうしたものかと考える。

 人の視点で考えれば、結局どちらも同じ気がするが、それでも何かあった時の保険として神が居てもいいかもしれない。だが、その神が悪さをしないとは断言出来なかった。神が人の味方とは限らないのだから。

 しばらく考えていたヒヅキは、ふと気になって人造神に問い掛ける。

「今回放置したとして、その後に私が何らかの原因で死亡した場合はどうなるのでしょうか?」

 ヒヅキの死で神が復活するのであれば、それは今でなくてもいいのではないだろうか。そう考えたヒヅキの問いに、人造神は小さく首を横に振る。

「その場合、君の中の神は別の何かに宿るか消滅する。もしくは世界を揺蕩う事になるだろうね。確実な事は言えないが、少なくともあれとひとつにはならないだろう。仮にそうなったとしても、その場合はどちらがどちらを吸収する事になるのかも分からないから止めておいた方がいい。最悪、斃した神が力を付けて復活するという事態もあり得るからね」

「では、放置した場合はそうなる可能性も?」

「全く無いとは言わないが、ほぼ無いだろうね。私もさせる気はないし」

「そうですか」

 納得したと頷いたヒヅキは、ではどうしようかと思案に戻る。

(とはいえ、そうなると答えはひとつしかないような?)

 かなりの低確率とはいえ、面倒な事態になる可能性が今後残るという。人造神もその事態を阻止するべく動くらしいが、絶対は無いだろう。

 そう考えれば、このまま放置するという選択は難しいような気がした。ヒヅキの目的は今代の神の排除。今後その可能性まで摘みとるのならば、ここで選択肢は存在しない。

 ただ、別の神の復活を選んだからとて望んだ通りにはならないかもしれない。もしかしたら吸収した今代の神が優位になって復活するかもしれないし、そうならなくとも、新しい神が今代の神よりも酷い神になるという可能性だって十分存在する。

(考えてもきりがないな)

 そういった可能性というならいくらでも考えられるので、ヒヅキはそれを思考の外に追い出す。今考えるべきはどうしたいか、という部分だろう。

(今後、生きていたいかどうか。そう考えれば答えは簡単か)

 神どうこうなどヒヅキでは判断がつかないし、その後の責任など知った事ではない。そう考えれば、とても簡単な問いだった。ヒヅキはもう目的を達成しているのだから。

(もう疲れたし)

 小さく息を吐き出したヒヅキは、それでどちらにするか決めたのだった。

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