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幕引きと幕開け13

 人造神の提示した方法に、ヒヅキは首を捻る。

「それは私の命でなければいけないのですか?」

「そうだよ」

「何故?」

 命を代価として何かを成し遂げる。そこまではいい。それが自身の命だろうと、ヒヅキはそんなモノに執着しない。今代の神が斃せた時点でもうどうだっていいのだから。

 しかし、それはそれとして、何故ヒヅキの命なのかという点が疑問であった。ヒヅキとしては、少々変わっていても自身は何も特別な存在ではないつもりなのだから。

 それに、周囲には英雄達や女性にフォルトゥナまで居る。神を対処する為に必要な命の代価だというのであれば、価値の高い命の方がいい気がしたのだ。なにせ相手は神なのだから。

「それは君が邪魔を……いや、封じているからかな?」

「どういう意味ですか?」

「そのままさ。君の中にはあの神の本体だったはずの存在が何故か存在している。普通なら人の身で封じる事など出来るはずもないというのに、不思議と問題ないようだし。しかし、その為にその存在はそこから出られなくなっている。もっとも、多分出る気が無いというのが大きいのだろうがね。とにかく、君という器が存在する限り、その本体が外に出る事は無い。だが、あそこにある毒物を処理するには、その本体に出てきてもらって吸収してもらうしかない。そうすれば、本来あるべき神が戻ってくるから、世界の平穏にもつながるからね。その神であれば寛大だから問題ないと思うし」

 何故だか寛大という部分だけ皮肉げに口にした人造神だが、その説明でヒヅキは納得する。たまに話し掛けてきていた声の主の正体がそれだろうと考えれば妙に得心がいったから。

「もしも放置して神の居ない世界を目指すならば、このままこの世界が崩壊するのを待てばいい。少々時間は掛かるがそれで終わる。しかし、もしも神が管理している世界を望むのならば、君があの毒物に近づけばいい。あまり苦しまずに逝けるだろうし、直ぐに神は復活するだろう。どちらも良い面と悪い面があるから、どちらがいいという訳ではない。それに、そんな先の事など君には関係ないからね。このまま放置していても、人の寿命ではどっちもその差は誤差程度でしかないから。だから君の好きな方を選ぶといい。考える時間もあるし」

 わざとなのか、とても軽い口調でそう告げる人造神。

 だが、どちらでもいいと言われても、ヒヅキだってどちらだってよかった。自身の命などに興味は無いし、復活する神が今代の神と同じではないのならば、そちらだって興味が無い。

 そして、世界に神が必要かどうかなんて分かる訳もない。確かに今代の神はろくでもない存在ではあったが、それでも終末の世界になるまでは特に問題はなかったのだ、そう考えると、神の存在も否定出来ない。

 というより、今代の神のように積極的に滅ぼそうとしてこないのであれば、別に神が居てもいいのではないかとさえ思えてくる。あんな神でも世界の管理はしていたのだろうし、そのおかげで発展出来ていたという考えも出来るのだから。

 さて、どうしたものか。ヒヅキは考えてみるも、どちらも興味が湧かないので答えは出ない。

 そうしてヒヅキが悩んでいると、その様子を眺めていた人造神は少し考えてから口を開いた。

「参考程度ではあるけれど、私の話でもしてみようか?」

「貴方の話ですか?」

「そう。私が人造神になった時の神は、君が復活させようかどうか悩んでいる神だからね。だから、私が人造神なんてふざけた存在になった時の話でもしてあげようかと。それを許容した神なのだから。もっとも、あれから色々と観て経験して価値観が変わっているかもしれないけれど」

「なるほど。お願い出来ますか?」

「いいよ。時間は十分あるけれど、君が考える時間も必要だろうから出来るだけ手短に話す事にするよ。まぁ、誰かに何かを説明するだなんて初めての事だから、上手く説明出来ないかもしれないけれど」

 そう言うと、人造神は静かに自身について語りだした。

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