幕引きと幕開け8
魔砲を放つ前に、今代の神が本当に光の魔法を把握して警戒しているのかを確かめようと、ヒヅキは砲身を今代の神に向けて動かしてみる。
砲身はただの光る環なので、それ自体には殺傷能力は無い。なので、仮に砲身が防がれたとしてもそれでどうなるという事はない。
もしも防いで来なければ気がついていないか、威力が無いのを正確に見抜いているかとなる。前者はおそらくないので、もしも防がなかった場合は、光の魔法を理解しているという事だろう。砲身も込められている力だけは大きいのだから。
そう思いながら、砲身を結構な速度で動かす。そうすると、今までよりも少し距離を離して防いできた。砲身はヒヅキにしか見えないという特性上なのか、普通の障壁では防げないはずなのだが、今代の神が展開した障壁は問題なく砲身を防いでしまった。
障壁に遮られて砲身が動かなくなったので、ヒヅキはまるで防がれて威力が無くなったかのように砲身を解除する。
(多分だが、光の魔法を感知出来て脅威なのは理解出来ても、それが何かまでは分からないのだろう。もしくは光の魔法について詳しくはないか)
今代の神の行動を考えたヒヅキは、即座にそう推測する。そう見せかけたという可能性もあるが。
(次は光の剣を飛ばしてみるかな)
再度砲身を現出させたヒヅキは、手早く砲身の位置を調整すると、即座に矢のように細長い光の剣を現出させて砲身に投げ入れる。そうする事で、砲身内で放り込んだ光の剣の速度が増して射出された。
今まで今代の神へとヒヅキが行使した攻撃の中で最も速いその攻撃は、先程の砲身の時よりも今代の神に近い位置で防がれる。だが、その際に光の剣が一瞬で障壁を2度ほど貫通したのをヒヅキは見逃さなかった。
(あの程度でも十分効果がある。という事は、もっと出力を上げれば届くかもしれないな)
どれほど痛打を与えられるかは分からないが、結果を見る限り、同様の攻撃を本気で行使すれば届くまではするだろうと判断出来た。
(とはいえ、同じ攻撃の連続は避けたい)
攻撃に慣れてもらっては困るので、ヒヅキは魔導を幾つか間に挟みつつ、時折砲身を今代の神へと移動させる。どれも防がれてしまったが、射出する光の剣に今代の神が慣れてしまわないようにするのが目的なので問題ない。それに収穫もあった。
(どうやら光の魔法は認識出来るというだけらしい。その認識が光の魔法なのか、脅威なのかは不明ではあるが)
砲身を移動させた際に、今代の神から更に離れた場所に必要以上に厚い障壁が展開されたので、その推測は間違っていないだろう。後は砲身だけでは脅威ではないと気づかれないようにしなければならない。
(砲身は見えないが、他は見えるからな)
今代の神がどうやって光の魔法を把握しているのかは不明ではあるが、それでも砲身以外は他の者でも認識出来るので、認識出来ない光の魔法は脅威ではないと気づかれる前に次へと進ませたいところだった。
(そろそろいいか)
更に幾らか魔導を行使したところで、ヒヅキは一気に攻勢に出る。といっても、それが成功しても今代の神の余裕が少し剥がれる程度だろう。そうなるとより手ごわい相手となるが、流石に斃すまでは無理だろうからそれもしょうがない。
そんな事をちらと考えながらも、ヒヅキは砲身を用意する。前回砲身を動かした際に砲身だけは結構な性能で現出させたので、これで2度目だ。
前回は結局見せかけだけで被害は無かったので、多少は油断してくれればいいがと思いながら、ヒヅキは短槍のような形の光の剣を現出させると、即座に砲身へと投擲する。
その光の剣は砲身を通り、前回と比べものにならない速度で今代の神へと迫る。
今代の神はギリギリで障壁を張る事に成功したが、そんなものは関係ないとばかりに光の剣は障壁を貫き、見事に光の剣は今代の神を横から貫いてみせた。




