幕引きと幕開け6
それから程なくして、今代の神に襲い掛かった英雄達が全滅する。
途中でヒヅキが聞いた女性の話では、英雄達は用意された肉体を与えられているだけなので、肉体を失っても元の魂だけの状態に戻るだけらしい。
その魂が消滅するには、今代の神がそうしようとするか、今代の神を斃すしかないらしい。これは今代の神に英雄として選ばれてしまった故の呪いだと言っていた。
そういう訳で、英雄達は全滅しても消滅した訳ではないそうだ。かといって、戦線に復帰も出来ないのだが。
前哨戦というほど戦いにはなっていなかったが、とりあえず余計なモノは消えたので、ここからが本番だろう。
「さて、本当の意味で僕と戦う資格がある戦士達が揃ったようだね」
壇上で演説するかの如く、もしくは舞台に立つ演者のように堂々と、そしてどことなく相手を小馬鹿にするように、今代の神は両手を広げてそう口にする。
「そちらの好きな時に始めるといいよ」
実に楽しそうにそう告げると、今代の神は悠然と佇む。
その間に残った英雄達は、今代の神の周囲で位置を調整する。今代の神の正面には女性が移動した。
ヒヅキは変わらず今代の神の側面に位置する。英雄達の移動と共に、反対側にフォルトゥナが移動した。
そうして再度今代の神の包囲網が完成する。ヒヅキはその間に今代の神に有効な攻撃について考えてみたが、先程見た光景からは何も分からなかった。なにせ全ての攻撃が棒立ちのまま無傷で受け止められていたのだから。
戦端を開いたのは、今代の神の正面に立つ女性だった。何処からか取り出した剣を一振りすると、離れた場所に居るはずの今代の神が障壁で何かを防いだ。
ヒヅキは今までと違い今代の神が防御を行った事に驚いたが、直ぐに英雄達の攻撃が始まったので、ヒヅキもそれに参加する。
まずは様子見と言えばいいか、今代の神が攻撃を避けるのかどうかを確認しなければならない。光の魔導もだが、白い球体を投げる事になった時は確実に中てたいところ。
ヒヅキが現出させた魔導は、白い球体と見た目が似た白い球体。それでも分類としては火球である。ヒヅキはその白熱の火球を今代の神に向けて放つ。
今代の神は女性の攻撃は防御したが、相変わらず英雄達の攻撃は防御する素振りはない。なので、そのままヒヅキの白熱の火球も今代の神に命中するかと思われたが、ヒヅキの攻撃の前にだけ障壁が出現してそれを防いでしまう。
ヒヅキはそれに疑問を抱くも、ヒヅキの攻撃を防いだ障壁がヒビだらけで破損寸前なのを見れば、もしかしたら白熱の火球は今代の神に対して有効なのかもしれないと思った。
(まぁ、必要最低限の防御を展開したとも考えられるが)
そう思いながらも、ヒヅキは続いて白熱の火球を5個展開して、それを別々の方向から今代の神に向けて一気に放つ。
今代の神はそれを個別に展開した小規模の障壁で、それぞれの白熱の火球を防御していく。
(ふむ。やはり白熱の火球だけ防いでくるな)
その様子を眺めながら、ヒヅキは真っ赤に燃える火球や寒々とした氷の球体、青白く白光する雷の球体に茶色の土の球体を展開して、今代の神へと放っていく。
先程まで使用していた白熱の火球ではないその攻撃だが、今代の神は変わらず全ての攻撃に対して個別に障壁を張って対処していった。
(つまり、何故だか知らないが、俺の攻撃は防いでくると)
それが女性が勝利の鍵はヒヅキだと言っていた事に繋がるのかどうかは知らないが、それを見れば確かにその可能性は高そうだと思わざるを得ない。
ヒヅキは色々な攻撃を今代の神へと放ちながらも、他の面々の様子を確認していく。
そうすると、今代の神がヒヅキ以外に攻撃を防いでいるのは、女性の謎の攻撃とクロスの黒っぽい紫の攻撃のみ。英雄達やフォルトゥナの攻撃は防ぐ素振りすら感じられなかった。
もっとも、そこから今代の神の弱点を見出すというのはヒヅキには不可能。女性の攻撃は何をしているのかさっぱり理解出来ないし、クロスの攻撃も見覚えが無い。それ以前に、ヒヅキ自身の攻撃も何故防がれているのか理解出来ていないのだからしょうがない。
とりあえず自分の攻撃は効果がありそうだという事だけ分かればいいかと思ったヒヅキは、戦いの前に女性が言っていたように好きに動く事にした。




