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幕引きと幕開け5

「いやぁ、お見事お見事」

 愉快げに手を叩きながら、今代の神は木像を斃した英雄達を称える。

「自我が在るのを混ぜすぎて思ったよりも完成度が低かったとはいえ、それでもそれなりに強かったはずなんだけれどもね」

 芝居がかった仕草で肩を竦めると、今代の神は小さく息を吐いた。その間に英雄達は再度今代の神を包囲する。

「まぁいいか。約束通り相手してあげるよ。加減はしてあげるから楽しませてね?」

 ニコリと笑みを浮かべた今代の神の背後から、英雄達が放った魔導が襲う。

 それを防ぐでもなく受けながらも、今代の神は平然としている。

「うーん。もう少し火力を上げた方がいいかもね? それか連携してくれないと。君達は相変わらず学習能力が無いね。だから大切なモノも守れないのだよ?」

 安い挑発だと傍から見ていたヒヅキはそう思ったが、当事者である英雄達にはかなり効いたようで、雄たけびを上げて激しい攻撃を始める英雄達が次から次へと続出する。

「ああ、やはり駄目ですね」

 ヒヅキの近くでそんな様子を眺めていた女性が、呆れたようにそう言葉を漏らす。

 その言葉にヒヅキが視線を向けると、ヒヅキの視線を感じたのか、女性は困ったように肩を竦めた。

「1度死んでいる影響なのか、どうも英雄達は理性と言いますか、感情の抑制が少々苦手なようで。特に今代の神への反応は顕著でしたね」

「ああ、それは確かに」

 女性の説明に、ヒヅキは今まで何度も今代の神と戦えると興奮していた英雄達を思い出す。

「ですので、まぁああなるかなと」

「それは分かりましたが、いいのですか? このままだと英雄達は全滅してしまいますが?」

 今も今代の神へと激しい攻撃を行っている英雄達だが、今代の神はその全てを受けながら涼しい顔で佇んでいる。攻撃を受けて動いた様子すらない。それだけで彼我の差というものがよく分かるというもの。

「いいのではないですか? この程度の挑発に乗るような者は元から当てにしてませんし。それに数は少ないですが、動かなかった英雄も居ますからね。むしろ思ったよりも多めに残っているようで、そちらは嬉しい誤算ですが」

「クロスとその周辺の英雄達ですか。あれはクロスが抑えたのですかね?」

「でしょうね。彼だけは他の者達とは出自というか出来が違いますから」

 何処か苦笑するような声音でそう言った女性は、一瞬だけ視線をクロスに向けた。

「後は目の前の演劇が終わるのを待ってから、戦いになるでしょう」

「それで勝てるのですか?」

「それは何とも。とりあえず勝利の鍵はヒヅキだというのは変わりませんが」

「私ですか?」

「ええ。今代の神もそれが分かっているから、ヒヅキは特に警戒されているようですから。まぁ、楽しみにしているとも言えますが」

「………………」

 よく分からない話に、ヒヅキは何と答えたものかと困惑する。

 確かにヒヅキが扱う光の魔導は強力だし、目の前で英雄達が手も足も出ないのを目の当たりにしても、光の魔導なら問題なく攻撃が通るだろうとヒヅキも確信している。

 だが、それだけだ。それで今代の神を斃せるかと訊かれたら、ヒヅキは答えに詰まってしまう。

 ヒヅキは、もしかしたら自身が知らない何かを女性達は知っているのだろうかと思うも、それは考えても分からない。なので訊く事にした。

「私であれがどうにかなるのでしょうか?」

「ええ。ヒヅキはヒヅキの思うように戦ってくれればいいですよ。こちらでも戦いますので、それだけで十分です」

 やや遠回しに訊いてみたが、答えは得られなかった。それでも、好きに戦えばいいと言うのであれば、別にいいだろうと開き直る。理由を知ったところで、結局やる事は変わらないのだから。

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