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幕引きと幕開け4

 木像は一足で英雄達との距離を詰めると、そのまま殴りかかってくる。

 木像に殴りかかられた英雄は、腕を横に払って木像のこぶしを軽くいなした。

 そうして無防備な姿を晒した木像だが、上半身を1回転させるという生き物ではありえない動きで再度英雄に殴りかかる。

 英雄が反対側から襲ってきた裏拳を膝を曲げて避けたところで、木像は飛び退き英雄達から距離を取った。

「うーん、動きがまだぎこちないかな」

 そんな木像を眺めていた今代の神は、困ったような声音でそう呟く。

「しょうがない。馴染むまでもう少し掛かりそうだし、次は遠距離で攻撃だね!」

 しかし直ぐに切り替えた今代の神が木像にそう命じると、今代の神の命令に反応した木像は、頭上に水と火と土の槍を一瞬で構築する。

 現れたその槍は、どれも長さは1メートルほどだろうか。短槍と呼ぶにも短いそれだが、籠められている魔素の濃度がちょっとおかしかった。

(普通の五割増し、いやそれ以上か。もしも破裂するような事があれば、あれ一発で家が簡単に吹き飛ぶな。防ぐのも大変そうだ)

 その魔導の槍を見たヒヅキは、感じる濃度に内心で苦笑する。出来るか出来ないかで言えばヒヅキも同じ事が出来るが、そんなモノを3本も同時に制御すると考えるだけで少し頭が痛くなってきた。

 それに槍の形を取ったという事は、貫通力に特化させたのだろう。これでは防御するにもそれ相応の力を籠める必要がある。つまり、避けられるのならば避けるのが最善だろう。

 しかも、今回は先程の近接戦闘ではなく攻撃範囲の広い魔導なので、英雄達の後方に陣取るヒヅキの方へと飛んで来る可能性もある。それだけに気は抜けない。

 木像が3本の槍を三方へと放つ。狙われたのはヒヅキではなく英雄達だった。

 高速で迫る槍を危なげなく避けた英雄達だったが、直ぐに何かに気づいて厚い障壁を前面に展開した。

 直後に展開したその障壁に何かが衝突すると、厚みのある障壁にヒビが入る。更にもう1度の衝撃でヒビが大きくなった。

(風の槍か。視認性が通常の風の槍よりも低いな。それでいながらあの貫通力なのだから恐ろしいものだ)

 ヒヅキはその様子を見ていて、見えない追撃の正体を看破する。分かりやすい攻撃の後に認識し辛い攻撃というのはよくある手ではあるが、その威力は1発1発が必殺の威力を秘めているというのは苦笑しか浮かばない。それを難なく防ぐ英雄達も相当なものだ。

(合計9発の魔導の槍。それだけで頭が痛くなりそうだが、光の魔導が1発でそれ以上の制御力を要求される事を思えば、まだ現実的か……)

 ヒヅキは状況をそう分析するも、自身の切り札の使い辛さに、何もしていないのに頭が痛くなった。

 それからも木像と英雄達の攻防は続く。魔導の応酬なので、ヒヅキとしては良い勉強になった。

 そこでふと視線を感じて今代の神の方へと視線を向けると、ヒヅキと視線が合った今代の神はニコリと満足そうに微笑んだ。

(教材という事だろうか?)

 今代の神のその反応に、ヒヅキはそう判断する。何の為にかは知らないが、どうやら今代の神はヒヅキを成長させたいらしい。

(今更多少成長しても意味ないような気もするがな)

 そう思うが、とりあえず勉強になるのでヒヅキは木像と英雄達の戦いを観戦する。今代の神の思惑など考えるだけ無駄というもの。

 それからしばらくすると、英雄達の攻撃が木像に中るようになる。

(一人でよくあれだけ戦えるものだ。というか、よくあれだけの数の魔導を構築出来るものだ)

 木像は英雄五人と戦い、互角に近い戦いを演じている。その過程で木像が繰り出した魔導はかなりの数で、ヒヅキだと既に思考力が鈍っていたかもしれない。

 そんな激しい攻防も、木像に攻撃が命中した事で一方的な展開へと変わる。

 英雄達の攻撃が中る度に木像の対処が遅れていく。

 そのまま木像が完全に守勢に追い込まれても防ぎきれないほどに致命的な流れになったところで、とうとう木像は英雄達によって破壊されてしまった。

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