仕事20
後ろからのシラユリの剣撃で深手を負ったスキアは、弱々しく声を出しなが何とか二人から距離を取るも、僅かなにらみ合いの後に倒れて消えた。
それを確認したヒヅキは一息吐くが、まだこれで終わりではないと気を引き締め直す。
「本当にお強かったのですね」
「ん?」
突然のサファイアの言葉に、ヒヅキは僅かに首を傾げる。
「スキアを一刀で倒してしまったではありませんか」
「ああ……それがそんなに凄いので?」
いまいちよく解っていないヒヅキに、サファイアは少し呆れたような表情をみせる。
「スキアは基本的に私達のような冒険者しか相手に出来ませんが、そんな冒険者でもスキアを一刀両断なんて芸当が可能な者はかなり限られてくるのですわ」
「そうなんですね」
「ええ。ですから、あまり人目に晒し過ぎますと、要らぬ厄介事に巻き込まれることが考えられますから、お気をつけてくださいね。私の、いえ他の護衛のお二人にも口止めと帰ったらカタグラの映像を消すように言っておきますわ。幸い今回は依頼主本人の護衛任務ですし」
「そうでしたか、色々とありがとうございます」
ヒヅキはサファイアに頭を下げると、そのまま顔を近くにまで迫ってきている、人型や植物型のスキアの方へと向ける。
「ですが、今はその事に心を配る余裕は無さそうですね」
「そうですわね!」
ヒヅキとサファイアは完全に戦闘体勢に入る。
「またスキアを近づけては人足の人たちが危険です。私が先行してスキアを叩くので、こちらの守りは任せますね!」
「え!? ちょっとヒヅキさん!!」
サファイアが止める間もなくそう言い残して、ヒヅキはスキアとの距離を一気に詰める。
「もう! 危ないですわよ! ……とりあえず、私はシラユリさん達と合流いたしますか」
届かぬぼやきを口にした後、サファイアは急いでシラユリ達二人との合流の為に急ぐ。
「なんだおっぱい、今頃来たのかー」
合流したサファイアに、シラユリが呆れたようにそう言葉にする。
「はぁ、シラユリさんは相変わらずですわね」
「これぐらい気を抜いてる方が上手くいくんだぞー」
「そうですか。まぁ今はそれよりも」
「ヒヅッキーの事だなー」
「ええ」
頷いて向けた二人の視線の先では、ヒヅキがスキアとの戦闘に入っていた。
「相変わらず驚くほどに強いなー」
「彼は何者でして?」
「さぁなー。ヒヅッキーはヒヅッキーさー」
「まぁ今はそれでいいですけれど」
「それで、ヒヅッキーは何て?」
「こちらの守備は任せた、だそうですわよ」
「なるほどー。楽でいいけど、討ち漏らしぐらいは相手にするかなー」
「そうですわね。こちらの守備はカトーさんに任せますわ」
「だなー。任せたぞ、カトー」
二人はもう一人の護衛であるカトーに人足たちの護衛を任せて、ヒヅキの脇を抜けてくるスキアの相手に向かうのだった。