神域への道151
「ああそういえば、向こう側に転移して調べた限りではありますが、今代の神の弱体化は問題なく成功していたようです」
「そうなのですか」
「ええ。以前私が戦った時の半分ぐらいの強さになっていたのではないかと思いますが、実際のところは何とも」
困ったような女性の言葉に、ヒヅキはそれはそうだろうと頷く。自身より強いか弱いかぐらいならまだしも、見ただけで正確な強さが分かるのであれば苦労しない。
「弱体化しているのであれば、それでいいのでは?」
「そうですね。これで勝機が見い出せるというものです」
「どうやって戦うので?」
「今代の神に限って言えば、正面から戦う以外に選択肢はないですね」
「正面からですか?」
「ええ。まず小細工が通用しませんので奇襲などは不可能です。あの転移魔法陣を使用した段階で捕捉されているでしょうから、隠れるというのが無理な話でしょう。相手はあれでも一応は神ですからね。なので、正面から戦う以外にはやりようがないのです。やれても包囲して戦うというのが精々でしょう。後は、相手側の動きを警戒する必要があるぐらいです」
「それはそれで分かりやすいですが」
「ええ。目の前の敵を倒すだけと単純明快。連携はそこまで緻密には出来ないでしょうし」
「そうなのですか? 英雄達の戦い方は知りませんが、素人考えながら、連携はした方がいいと思うのですが?」
「まぁ、連携出来るのであればそうでしょうね。しかし、平時であればともかく、相手があの神だと無理でしょう。あれを前にしたら英雄達はほとんどが暴走状態になるでしょうし」
「ああ、なるほど」
視線を動かして英雄達の様子を確認したヒヅキは、直ぐに納得したと頷いた。
「あの状態で連携を強制したところで大した事は出来ませんよ」
興奮している英雄達を眺めながら、あの状態の相手でも強制する事は出来るんだなと、ヒヅキは変なところで感心する。
「なので、正面から戦う訳です。言い方は悪いですが、彼らは囮ですね」
「では、暴走しない者達でその間に死角から攻撃を?」
「死角があるとは思えませんが、まぁ別口からの攻撃ですね。最悪囮ごと攻撃してもいいですし」
「いいんですか?」
「勿論。彼らは死人です。巻き込んだところで失うのはこちらが与えた肉体だけですから。ただ、無暗に巻き込むのは戦力の低下に繋がるので控えてほしいですが」
「なるほど。分かりました」
「そういう訳でして、彼らを先鋒にして、私達は別方面から攻撃する形になります。勝てそうなら遠慮せずに強力な攻撃をどうぞ」
当然のようにヒヅキ達も攻撃するようにと言ってくる女性だが、使えるものは何でも使うという事だろう。
「分かりました。しかし、今代の神は人型をしているのですよね? そのままだと同時に攻撃出来る人数は限られてくると思うのですが」
今代の神が巨大な姿であれば、英雄達が攻撃していてもヒヅキ達が攻撃する場所は残っているだろう。しかし、ヒヅキ達と同じ大きさであれば、同時に攻撃出来る人数はたかが知れている。
「そうですね。その辺りは相手次第ですが、本格的に戦うとなったらこちらが攻撃しやすいように巨大化すると思いますよ。あれは酔狂な性格をしていますから」
「ああ、なるほど」
女性の言葉に、ヒヅキはすんなりと納得がいく。ヒヅキの印象としても、今代の神は悪戯好きな暇人といった感じなのだから。
「まぁ、その前の完全に油断している時に斃せるのが理想ですが」
巨大化しても油断はしているだろうが、それでもそうなったら戦う気になっているという事には変わらない。なので、その前の完全に油断している段階で終わらせたいと女性は語る。
それから転移後の行動などをもう少し話したところで、女性は休憩を終える事にした。




