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神域への道146

 井戸の縁から井戸の底を覗く。

 途中から光を遮るように真っ暗になっている井戸の中は不気味であり、奇妙でもあった。

『この暗闇って、単に光が届かないからという訳じゃないよね?』

 その真っ黒な井戸の底を眺めながら、ヒヅキはその疑問を口にする。井戸の途中から唐突に黒に塗りつぶされたような色に変わっているのがあまりにも不自然だった。

『影に見えそうな位置からではあるが、極端に変わり過ぎだし』

『暗闇の中から上は問題なく見えるので、おそらく上から井戸の中を覗くとそう見えるようにしただけの簡単な魔法でしょう。暗闇に変わる辺りに魔法道具でも仕込まれているのかもしれません』

 フォルトゥナの話にヒヅキは頷く。

 とりあえず見せかけだけのようなので問題ないだろう。そう判断したところで、縄を伝って下りることにした。

『それにしても、井戸の中には何が在るのだろうか?』

 まずはフォルトゥナが一人で先に下りるというので任せたところで、ヒヅキはそんな話をする、

 縄は下で固定されているようだし、石を落としても水の音はしなかった。かといって、何か硬い物にでも当たったような音もしなかったので、井戸の底がどうなっているのか分からない。

 目視も出来ないので、もしかしたら存在していないのではないか、などという考えも浮かぶほど。しかし、感知魔法では一応井戸の底は確認出来ていたので、それはないだろう。ただし、感知がかなりあやふやなので、何らかの力が働いているのだろう。

『横道らしきモノがあるようです』

『横道?』

『はい。井戸の底に在る壁の一部が空洞になっているようなので、それが横道である可能性が考えられるかと』

『ふむ。なるほど』

 井戸の底に下りながらフォルトゥナがそう答える。

 ヒヅキよりも底に近いので、より明確に感知出来るだろうから、その結果は正しいのだろう。しかし、フォルトゥナの口ぶりからして、それが単なる空洞か何処かに続いている道なのかは分からないようだ。

 ヒヅキは考えてみるも、そもそも現在地が分からないのだから考えるだけ無駄だろう。とりあえず横道なら森の下を通っているのだろうと推測出来るぐらいか。

 それから少しして、フォルトゥナは井戸の底に到達したようで、その報告がヒヅキに入る。

『井戸の底に辿り着きました。縄はやはり底で固定されているようです。そして、現在までで危険そうな場所は確認出来ていませんが、底の方も調べますのでもう少しお待ちください』

『分かったよ』

 フォルトゥナの報告にヒヅキはそう返す。調査の結果、もしも井戸の底には何も無いのであれば、ヒヅキまで下りる必要はない訳だし。

 それから少し待つと、フォルトゥナから追加の報告が入る。

『ヒヅキ様。井戸の底を調べてみましたが、どうやら空洞ではなく横道が在るようです。何処まで続いているかは不明ですが、結構長いようです』

『分かった。危険が無いようなら下りるよ?』

『はい。そちらは問題ありませんでした』

『ありがとう。下りたらその横道を進んでみようか』

『御心のままに』

 という訳で、ヒヅキは光球を伴いながら縄を伝って井戸の底に下りる。井戸の深さはかなり深く、通常の井戸の数倍は深かった。

 そうして到着した井戸の底は、長い時間を掛けて上から落ちてきた土が積み重なったのか、井戸の外に広がる森の土とそこまで変わらないように見えた。

 それからは待っていたフォルトゥナに案内されながら、ヒヅキは横道を進んでいく。

 横道は高さが低く、ヒヅキの首元ぐらいまでしかなかったので、腰を屈めながらの移動になる。

 横道内は少しじめっとした空気だが、思っていたよりも湿度は低い。これなら雨上がり直後の外の方が湿気が鬱陶しいだろうと思える程度。

 足元に在る土もあまり水分を含んでいないが乾燥している訳ではないので、砂埃は立たないし足を取られる事はない。

 壁や床や天井は石で補強されているので、ここは誰かが造った場所なのは間違いないだろう。水気が少ないのは長い間放置されていたからか、それとも最初からこの辺りはあまり水が出なかったのか。

(避難所に水が出る水瓶が置いてあったし、もしかしたらここは最初から井戸ではなかったのかもしれないな)

 そんな事を考えつつヒヅキは横道を進む。そしてそれなりに進んだところで、ヒヅキ達は少し休憩する事にした。

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