神域への道139
フォルトゥナの案内で到着した開けた場所は、ヒヅキが思っていたよりも広かった。
『王城ぐらいなら入りそうだね』
その広さを確認したヒヅキは、そう感想を口にする。
そんな広い場所の中心には、フォルトゥナが僅かに確認したという建物が在った。
それは森の中には不釣り合いなほどしっかりとした石造りの建物。時の経過で外観が褪せてはいるも、それを含めて厳かな雰囲気を醸している。
『あの建物は崩れていないんだね』
『はい。何者かの気配は感知していませんが、直前まで誰かが使用していたと言ってもおかしくはないでしょう』
住んでいたと表現するにはその建物はあまりにも厳格そうな雰囲気なので、フォルトゥナも使用していたと表現したようだ。
実際、それは住居用というよりも教会と言われた方がしっくりくるほど。ただ、建物の大きさ自体はそれほど大きくはなく、一般的な平屋よりは大きい程度でしかない。
遠目に建物を観察していたヒヅキ達は、そのまま近寄って観察する事にした。
その前にまずは、十分に距離がある内に建物の周囲を回って確認する。
『裏側も崩れた様子は無いね。それに入り口近くには井戸も在るのか』
建物の周囲をぐるっと1周したところで、ヒヅキ達は確認出来た唯一の入り口の前に立った。
『ここだけ木の扉だけど、腐蝕している様子はなさそうだ』
『はい。それに、おそらくこの扉は中身が金属製かと』
『そうなの? よく分かったね』
フォルトゥナの言葉を受けてヒヅキは扉を細かく観察してみるも、木製の扉にしか見えない。
しかし、フォルトゥナに助言を貰って感知魔法をで細かく調べてみると、確かに金属製の扉に木を貼り付けて偽装しているのだと分かった。随分と念入りに偽装しているようで、ただの扉と思って軽く調べただけでは分からなかった。
それから調べてみても危険はなさそうなので、フォルトゥナが扉を開く。扉の先は真っ暗ではなく、奥の方から仄かに光が漏れている。
『明かりの魔法道具でも設置されていたのだろうか?』
そういった物が在ってもおかしくはない雰囲気の建物だが、ロウソクの明かりのように仄かな明かりは、何だか建物の不気味さを増幅させている気がした。
ヒヅキ達は中に入ると、真っすぐな道を進んで奥の光が漏れている部屋の前に移動する。
部屋の前に到着すると、建物内は1部屋しかないのか、通路から見た部屋はかなり広々としていた。
その広々とした室内の入り口と奥の方、それと中央の天井辺りに光源がある。それにより薄っすらと部屋の内情が見えるが、どうやら部屋の中央に地下へと続く階段があるようだった。
部屋を見回してみても、その階段以外には何も無い。それでもまずは部屋の中を調べてみようと、ヒヅキ達は部屋に入って歩き回っていく。
『何かあった?』
『いえ、何もありません』
『こっちも何も無かったから、ここには階段しかないようだね』
部屋を一通り調べ終わると、ヒヅキ達は階段の前でそう確認し合う。
二人の意見が一致したところで、二人は階段の方へと視線を向ける。階段は下に真っ直ぐ続いているようだが、階下は明かりが無いのか、途中から階段は闇の中に消えていた。
『この下には一体何があるのか』
他に調べるところも無いので、ヒヅキ達は階段を下りていく。感知出来なくとも、もしかしたら誰か居るかもしれないので、念の為に光球は出さないで進む。
足音を立てないように気をつけながら階段を下りる。階段は1階分の長さしかなかったようで、直ぐに階下に到着した。
『ここも広いだけ?』
上階と違って階下には明かりは無いようだったが、造り自体は同じらしく、下りてきた階段の隣に更に下へと続く階段がある。他には広い空間が在るだけで何も無い。
それでもヒヅキ達は調べてみたが、やはり何も発見出来なかった。
『ここは何の施設だったんだ?』
研究所とも民家とも違うそこは、敢えて当てはめるならば倉庫だろうか? しかし、それにしては中央に階段というのは使い勝手が悪そうだが。
ヒヅキは首を捻るも、とりあえず考えても分からないので、更に下へと向かう事にした。




