神域への道135
ヒヅキが転移魔法陣の読み取りをしていると、転移魔法陣が淡く輝いてフォルトゥナが戻ってくる。
戻ってきたフォルトゥナは、転移魔法陣を変えてまた転移していった。探索した場所以外は存在しないのであれば、今転移した先が最後だろう。
(ここから出口に出られそうだとか、変えられる転移魔法陣の数が多いとかは聞いていないからな)
そんな事を考えながらも、ヒヅキはフォルトゥナが戻ってくるまで転移魔法陣の読み取りを行っていく。
転移先の調査といってもそれほど調べるモノがある訳でもないので、急がなくとも数10分もあれば終わる。ヒヅキが僅かだが新たに転移魔法陣の構成を読み解けたところで、フォルトゥナが戻ってきた。
『これで終わりだっけ? どうだった?』
『はい。何処も同じでした。やはりここの転移魔法陣が中継点になっているようで、他はこの場所と繋ぐだけのようです』
『なるほどね。転移魔法陣の周囲に変わったところは?』
『確認出来ませんでした。転移先の広さも他と変わりませんし、壁の中を板で隠されていたのも同じでした』
『そっか。まぁ、これが各階層を繋いでいるというのは分かったよ。それに、この広さ的に人の往来用ではないだろうし』
ヒヅキやフォルトゥナぐらいの体格であれば問題なく使用出来るが、地下4階の住民達では使用出来ないだろう。大柄な種族向けと思われる椅子だけでも、重ねなければ2脚か3脚しか1度に送れないだろうから。
それはそれとして、という事は別に出口が在るのだろう。探索して見つからなかったので、分かりやすい場所には無いのだろうが。
『という事は、その板みたいなモノで隠されているという事なのかな? 搬入を考えれば、あの辺りを探せばまた何か在るかもしれないね』
ヒヅキ達は途中で転移魔法陣を見つけたので、まだ全ての場所を調べたという訳ではない。なので、改めて戻って調べてみれば何かしら見つかるかもしれなかった。
『それに……考えてみれば資料室で資料は調べたけれど、部屋自体は調べてなかったし。そういった場所も何ヵ所か在るから、何処かに当たりがあるかもしれない』
ヒヅキの言葉に、フォルトゥナも同意する。もっとも、他に調べる場所もないので、それで見つからなければどうしようもないが。
今後の方針が決まったところで、ヒヅキ達は転移魔法陣を使用して1階へと戻る。
1階に戻ったヒヅキ達は、まずは資料室を調べてみる事にした。資料は前回調べたので、今回は部屋に何かないかと探っていく。
狭い資料室なのでそれも直ぐに終わったが、結果は何も無しというものだった。
(まぁ、普通に考えれば当然か)
もしも資料室に出口が在ったら、みんなこの場所を通過して外に出ていく事になる。この場所の資料にどれだけの価値があるのかは知らないが、それは非常に不用心であるし、効率的でもない。
という訳で廊下に戻ったヒヅキ達は、廊下の調査を再開する。
建物が大きいので廊下もそれに比して広いが、それでも先程の考えを適用するのであれば、ヒヅキ達がやってきた部屋から物資を搬入し、それから壁の運搬用の転移魔法陣でその物資を地下3階へと送り、そして搬入した者は帰るという流れになると思われた。であれば、地下3階へと続く転移魔法陣か、搬入口の近くに出口があると考えられる。
やはりその辺りだろうとヒヅキは考えながら、その2ヵ所周辺を徹底的に調べていく。そうすると、
『うーん。答えは簡単だったな』
物資の搬入口、つまりはヒヅキ達がやってきた部屋の壁に操作盤が隠されていた。
ご丁寧に例の板と同じ性質の石で隠されており、見た目も擬装済み。ぞのうえ厚みもあったので、少し強めに壁を叩かなければ、そこにそれが在るなどヒヅキ達でも気づかなかったほど。
ともあれ、どうやらその操作盤で部屋の転移魔法陣を一時的に切り替えることが出来るようで、それを使用すれば無事に外に出られそうだった。




