神域への道133
フォルトゥナが転移魔法陣で消えてから少し経ったところで、フォルトゥナが消えた時と同じ転移魔法陣で戻ってくる。
『問題ない?』
『はい。行き来に問題はありませんし、向こう側の板も無事に内側から取り外しが出来ました』
『そっか。何処に繋がっていたか分かる?』
『小さい方の居住区でした。そして、そこからでしたら他の場所へと移動先を変更可能なようです。他には移動していないので、1度検証しなければなりませんが』
『なるほどね。居住区の方に集積してから分配していたのか』
『はい。それと、どうやらこの転移魔法陣は外から簡単に起動出来るようで、荷物だけ転移させる事も可能なようです』
『ふむ。という事は、何らかの連絡手段があったのかもしれないな』
フォルトゥナの報告を聞いたヒヅキは、目の前の物資を他の階層へと送っていた転移魔法陣についてある程度理解した。とはいえ、まだ検証は必要そうではあるが。
『まぁいい。それなら続きは、場所の変更が可能な転移先で検証した方がいいか』
『では、先に向こう側へ移動しておきます』
『分かった。少ししたらそちらに向かうよ』
ヒヅキの言葉に頷くと、フォルトゥナは転移魔法陣で転移していった。
転移魔法陣がある場所は狭いので、二人一緒だと抱き合ってギリギリぐらいの広さ。もしもその状態で何か起きた場合は対処が難しいので、一人ずつ順番に転移していく。
待っている間にヒヅキが読み解いた限り、ここの転移魔法陣は安全装置として、転移先の転移魔法陣の上に一定以上の大きさの物が載っていると起動しないようになっているようだった。
数分程時間を置いたところで、ヒヅキは転移魔法陣の上に乗る。そのまま魔力を流して起動させると、直ぐに別の場所に転移した。
転移したと言っても、見た目はあまり変わらない。フォルトゥナが火の玉を出して周囲を照らしていたが、転移した正面は壁なので代わり映えはしない。
違いと言えば、転移した場所がやや広いぐらいか。もっとも、体感としてはほとんど変わらないのだが。
後は明らかに違うのは、正面の壁に書かれている文字ぐらいだろう。何が書かれているのかは分からないが、短い文字列なので階層でも示しているのかもしれない。
壁の中から廊下に出たところで、ヒヅキは光球を現出する。それを確認したフォルトゥナは火の玉を消した。
その後は転移魔法陣を調べていくが、フォルトゥナが調べた通りにこの場所からならば他の階層に移動出来るようだった。その辺りの変更は、壁際の操作盤から出来るらしい。
フォルトゥナがそうして調べている間、ヒヅキは近くの部屋を覗いてみる。そうすると、確かに地下3階の居住区と同じ部屋だったので、ここが地下3階の居住区で間違いないらしい。
その次は転移魔法陣を眺めてみる。フォルトゥナの操作により、目の前で転移魔法陣が切り替わっていく。どうやら小難しい操作は不要で、行き先ごとに転移魔法陣が用意されているらしい。
程なくして調査を終えたフォルトゥナは、検証の為に転移魔法陣を使用して別の階層へと転移していった。
何かを送って調べてもいいが、安全装置の関係上、送り先で誰かがそれを転移魔法陣からどけなければその転移魔法陣は使用出来ないので、最初から誰かが転移しなければならない。どの転移魔法陣がどの階層に繋がっているのかは、文字が読めないヒヅキ達では分からないのだから。
ヒヅキがフォルトゥナが消えた転移魔法陣を観察していると、
『ヒヅキ様、聞こえますでしょうか?』
フォルトゥナから遠話が届く。どうやらここでも階層を跨いでも遠話は使用出来るらしい。
『聞こえるよ。今何処?』
『ここは直ぐ下の居住区のようです』
『なるほど』
『試しに近くの部屋の椅子をそちらに送りますので、お受け取り下さい』
『分かった』
ヒヅキがフォルトゥナの要請に承諾すると、直ぐに転移魔法陣が薄っすらと輝いて、大きな椅子が転移魔法陣の上に現れた。




