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神域への道132

 その壁は少し凹んだ場所で、人一人が立ってギリギリ収まる程度の広さしかない。高さも2メートルほどしかなく、ヒヅキよりひと回り体格がいいとかなり窮屈に感じそうな場所だった。

 そんな場所だが、そこを隠すように周囲の壁と同色の板が嵌め込まれていた。しかも丁寧に継ぎ目を消すような細工も施してあり、何も知らなければ見落としていただろう。実際ヒヅキ達は見落としていたのだが。

『それにしても、何で感知魔法で見つけられなかったんだろうか?』

 ヒヅキはその壁の凹みを眺めながら首を捻る。

 1階を見て回った時に何度かその凹みの前を通っているし、その際に感知魔法はしっかりと使用していた。

 いくら広域の探索を目的としていたといっても、人一人が入れるぐらいの大きさなので、そこまで小さな空間という訳ではない。である以上、見落とすとは思えなかった。これが1度通っただけだというのであれば、見落としたという可能性もまだあるやもしれないが。

 ヒヅキが疑問に思っていると、フォルトゥナが凹みを隠していた板を元の場所に戻す。そうすると、感知魔法で認識していた空間が曖昧になったような気がした。

『という事は、その板が原因なのかな?』

 板を凹みの前から退かしたフォルトゥナに、ヒヅキは問い掛ける。フォルトゥナは板の縁を眺めながら、ヒヅキの問いに頷く。

『そのようです。後はおそらくこの板と壁の継ぎ目を隠していたモノもでしょう。調べてみなければ原理は分かりませんが、反対側に在るモノを認識し辛くする作用があるようです』

『それはまた面倒なモノだね。でも、それを調べれば感知魔法を掻い潜る方法が分かるかもしれないね』

 女性達が感知魔法を掻い潜るのに用いている方法とは違うかもしれないが、それでも手掛かりにはなるだろう。

 それとは別に、そういった存在が確認された以上、他の場所にも似たような仕掛けが存在している可能性があった。

 元々部屋などを調べる時には感知魔法ばかりに頼っていた訳ではないが、普段の移動時なんかは感知魔法に頼っていた。という事は、今回の廊下のようにわざわざ調べようとしていなかった場所にはそういった仕掛けが残っているという可能性があるという事に他ならない。

 しかし、そういった場所は結構存在するうえに建物全域なので、最早探索のやり直しに近い。

『まぁ今はとりあえず目の前の空間を調べてみるか』

 もしもこれが出口であるのならば、そのまま外に出てもいいなとヒヅキは思った。もしも何処かに目の前の凹みのような隠し部屋が在ったとしても、準備段階の研究施設であるのだから大した物はないだろうと、やや現実逃避気味に思いながら。

 そんな事を考えながらも、ヒヅキはフォルトゥナと共に凹みを調べていく。

『これはやはり転移場所だったのかな?』

 凹み内の壁の一部が動くのを発見したので動かしてみると、そこには研究施設に来る前に転移した何も無い部屋に在ったような、何かを入力する装置が隠されていた。

 フォルトゥナがそれを弄ると、凹みの床の部分に魔法陣が現れる。

 ヒヅキがぼんやりと光る魔法陣を観察してみると、それが転移魔法陣であるのが読み取れた。出口かどうかまでは不明だが、それでも何処かに移動する場所なのは分かった。

『入り口の部屋が近いし、ここが物資搬入した人員が使用する出口だったのかな? まぁ、それにしては狭い気がするけれど』

 転移魔法陣に視線を向けたまま、ヒヅキは自身の推測を口にする。もしそうだとすれば、この魔法陣を使用する事で外に出る事が出来るだろう。もっとも、転移先は入ってきた場所と同じ場所ではないだろうが。

『もしくは、下階へと物資を運ぶ場所かもしれません。どうもこれは一方通行ではないようなので』

『……ああ、なるほど。階段を使って物資を運ぶのは大変そうだもんね』

 フォルトゥナの推測に、ヒヅキもそれを読み取り、なるほどと頷く。という事は、やはり下階にも似たような場所が廊下に在るのだろう。

『使ってみる?』

『この魔法陣は使用出来そうですが……そうですね、では、まず私が使用して確認してみます』

『分かった』

 ヒヅキの問いに、フォルトゥナはまず自分が安全性の確認をすることを告げる。

 それにヒヅキが頷いたところで、フォルトゥナはその転移魔法陣の上に乗るのだった。

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