神域への道129
下の階を下見してから居住区らしき地下3階に戻って探索してみるも、似たような部屋が続くばかり。
その部屋も使用された形跡の在る部屋は少なく、圧倒的に未使用だと思われる部屋の数の方が多い。
やはりフォルトゥナの予想通りに準備中だったのだろうかと思いながら、見つけた使用されていたと思われる部屋を調べる。
しかし、使用されていたと思われる部屋だが、調べてみても着替えが数着あるぐらいで、他に資料どころか書き留めすら見つからない。
本当にここは使用されていたのか疑問に思いながらも地下3階を調べ終わると、そのまま地下4階に下りる。
地下4階は下見した通り、地下3階の部屋を大きくしただけの場所だった。家具も部屋の大きさに合わせて巨大化しており、やはりここは大型の種族用の居住空間なのだろうとヒヅキは一人納得する。
ここも上階同様に未使用の部屋が多く、使用されていたと思しき部屋もやはり着替えがある程度だった。
『ここも何もないのかな?』
そんな事を口にしながらも、ヒヅキは探索を続けていく。そうしていると、奥の方の部屋に上階の部屋ぐらいの大きさの部屋を見つける。
『なんでここだけ上の階と同じぐらいの大きさなんだろう?』
その部屋の周囲の部屋は大きな部屋。いや、周囲どころか、この階層の部屋は何処も大きな部屋ばかりだった。
それだけに、ヒヅキ達ぐらいの大きさの種族が使用するような他よりも小さな部屋は違和感があった。端的に言えばかなり浮いている。
警戒しながらも扉を開けて部屋に入ってみると、室内は今までにないぐらいに散らかっていた。
『これは……何かの資料かな?』
ヒヅキは足下に広がっている紙を1枚手にするも、読めない文字がびっしりと書かれているぐらいしか分からない。
他の紙も同様で、足の踏み場の無い室内には、そういった紙が床一面に広がっていた。
それらを軽く見回してみると、どうやら積み上げられていた紙の山が倒壊したようだというのが分かった。しかも複数在ったようで、この部屋だけ紙の床なのかと思うほど。
資料っぽいので、何となくそのまま踏むのは躊躇われたので、ヒヅキは足下の紙を拾って適当に纏めながら奥へと進む。
部屋の奥の方には文机らしき簡素な机が置いてある。頑丈に作られていそうだが、色などは塗られていないようで木肌そのままの色をしていた。
だというのに、何故かその机の傍に置かれている椅子は、高そうな革張りの座りよさそうな物。机と椅子の高さは問題なさそうだが、かなり不釣り合いな見た目をしている。
紙を纏めながら進んだヒヅキ達は、ようやく机の前に到着する。机の上にも資料らしき紙が何枚か置かれ、隅の方に紙の小山が出来ていた。
ヒヅキは机の上を確認した後、机に備わっている引き出しを開けて調べていく。
引き出しの中にも紙の束が在ったが、他には筆記用具ぐらいしか見つからない。
そうして最後の引き出しを開けて調べると、
『ん? これは……』
引き出しの奥の方で、引き出しの中で倒れた紙の山に埋もれるようにして分厚い皮張りの本を見つけた。
『見覚えがあるような気がするのだが?』
やや使用感のあるその本を手にしたヒヅキは、フォルトゥナに見せながらそう確認する。
『はい。こちらの方が新しいようですが、人造神について書かれていた日誌と同じ物だと存じます』
『だよね』
フォルトゥナも同意したところで、ヒヅキはその本を開こうとするも、どうやっても本は開かない。
『これは置物だとでも言うのだろうか?』
そんな疑問と共に本の側面を撫でてみるも、紙が捲れるような感触はない。どうやら本当にただの置物扱いなのだろう。
『まぁそれでも、これがここに在るという事は、おそらくこの机は筆者の物。そしてあの日記と比べても新しいという事は、やはりここはあの部屋よりも前という事なのだろうな。そしてこれがある以上、ここは人造神を創る為の施設で間違いないようだ』
本の置物を机の中に戻したヒヅキは、これで一気に色々と分かったような気がして、思わず腕を組んで唸ってしまった。




