神域への道126
ヒヅキが扉の前に到着すると、通路に入った時同様に目の前の扉が消失する。
扉が消えると、目の前に透明な壁越しに見た場所と同じ場所が現れる。
ヒヅキが警戒しながらも中に入ると、背後で扉が出現して通路を閉ざす。
『ふむ……ここでは何か飼育していたのだろうか?』
それを見たヒヅキは、そう考えた。そしてフォルトゥナもその考えに同意する。
『おそらくですがそうかと。外に逃げないように設計されているのだと存じます』
その言葉を聞きながらヒヅキは室内を見回す。
透明な壁越しにフォルトゥナの姿が見えるので、確かにあの透明な壁の向こう側という事なのだろう。
外側から見た時には気がつかなかったが、そこは透明な壁で幾つかに区切られた空間のようで、その1区画はそこそこ広い空間だった。数人で暮らしても窮屈さは感じないだろう。もっとも、個室ではないので精神的には窮屈だろうが。
壁には頑丈そうな輪っかが取り付けられているが、それそのものが拘束具という感じではない。しかし、そこに拘束具を繋げる役割はあったのだろう。
見渡した限りだが、奇麗な場所だった。光球を増やして室内を照らしているが、見た限りの感想では、この空間を使用していたとしても僅かな期間だけだろう。
ヒヅキは警戒しながらもその室内を歩き回る。部屋の造り自体は機材が置かれている場所と同じようなので、やはり同じ部屋を透明な壁で分けているだけのようだ。
ヒヅキが入ってきた扉以外に出入り出来そうな場所はなく、やや息苦しい。これに本来は向こう側からの観察する視線が加わるのだとしたら、もはや拷問であろう。
そんな事を思いながらヒヅキは歩き回っていると、ふと脳裏にとある石像が思い浮かぶ。
「………………」
そこで足を止めたヒヅキは、周囲を見回して首を捻る。
(似ていると言えば似ているが、閉じ込める場所と考えれば似たり寄ったりでもおかしくはないのか? それにあちらはもっと古い感じがしたし)
頭の中で比べたヒヅキは、答えが出せずに軽く首を振る。
(ここは輪っかが壁に取り付けられているが、向こうには無かった。いや、壊れた場所に在ったのか? そういえば、ここの1区画の広さはあの部屋の広さに近いような?)
歩みを再開したヒヅキは、壁際まで寄った後に部屋の広さを確かめるように歩いていく。
しばらくそうすると、また考えこむように足を止めた。
(細かな違いはあるも、広さはほぼ同じ。向こう側も含めればこちらの方が広いが、それはどうでもいい。見た目はこちらの方が奇麗だが、もしもこのまま年月が経過したらあんな感じになるのだろうか? こちらはちょっと窮屈で息苦しいだけだが、このままここで実験が続いたとしたら……)
時が経過すればここもあの場所のようになるのではないか。そう結論に達したヒヅキは、ここはあの石像が在った場所の昔の姿なのだろうと推測する。
(そうなると、おそらく何かを培養していたと思しきあの施設もここと関係があるのだから、もしかしたらあの辺りは全てこの施設を部分的に再現した場所という事なのだろうか。でも、何の為に?)
そう疑問に思うも、ほとんど答えは出ている。ただ、何故ヒヅキ達に見せたのかが分からない。
(教えてどうする? 止めてほしいのか? それともあの建物に関しては今代の神とは別口なのか。そうだとしても、今代の神と人造神は何らかの形で関係しているはず)
分からないと思いながらも、それでも今代の神とは無関係ではないと思い、ヒヅキは何を自分達にさせたいのかを考えてみる。
しかし、ヒヅキには今代の神を止めてほしいのか、それとも知ったところで今代の神は止められないからどうでもいいのだろうか、もしくはただこういった出来事があったという事を伝えたかっただけか。ぐらいしか思い浮かばなかった。




