神域への道125
集中しているフォルトゥナの姿に、ヒヅキは声を掛けていいものかと考えてしまう。
普段であれば声を掛けるのは後にしようと思うのだが、既に調べられるだけ調べてしまったので、後はフォルトゥナの方の状況を確認するぐらいしかする事がない。
(下の階に下りるという選択肢もあるが)
もしくは上に戻って調べ直すだろうか。ヒヅキとしては透明な壁の向こう側へと続く道を見つけたいところなので、フォルトゥナに声を掛けないのであればそちらを選んでもいい。
(ただ、黙って移動するのもな。せめて移動する事を告げるべきなのだろうが、それならついでに状況を確認してもいいだろうし)
どうしたものかと考えるヒヅキだが、そのまま突っ立っていてもしょうがないので、考えながらもう1度透明な壁を調べてみる。ついでに機材が在る側の部屋も全て改めて調べてみる事にした。流石にそれだけ調べた後なら声を掛けてもいいだろうと考えながら。
そうして部屋を調べてみた結果、階段以外には特に何かおかしなところがあるという事はなかった。ただ、壁の一部が少しだけ気になっただけ。
(……うーむ。なんとなくこの辺りに何かあるような気もするのだが、気のせいだろうか?)
ヒヅキは壁の一部に目を向けながら首を傾げる。上手く言葉には出来ないが、その場所は他とは違う気がしたのだ。
(はっきりと違和感を覚えている訳ではないから、どう違うかと聞かれても答えようがないからな)
それでも何か違う気がしてヒヅキは頭を捻る。敢えて言葉にするならば、浮いているだろうか。壁が浮遊している訳ではないが、周囲と何処か違うような気がするのだ。
だが、かといってそれを明確に言葉にする事は出来ない。あくまでもなんとなく他とは違う気がするというだけなのだから。
そうしてヒヅキがしばらくの間壁の前で悩んでいると、突然目の前の壁が消失する。
「!?」
突然の出来事にヒヅキは驚くも、消失した壁の向こう側に現れた道を警戒しつつヒヅキは周囲に視線を向ける。
『申し訳ありません。ヒヅキ様』
そうしていると、直ぐにフォルトゥナから謝罪の言葉を掛けられた。
それにどういう意味かと、ヒヅキは視線の端をフォルトゥナに向ける。
『どうやら色々と確かめていたらそこの扉を開けてしまったようです』
『扉……道理で』
何故周囲の壁と違うような気がしたのかという答えを聞いたヒヅキは、なるほどなと納得する。ヒヅキが違和感を感じた部分だけ壁ではなく扉だったという訳だ。
『それで、この通路は何処に繋がっているか分かる?』
予想はしているが、ヒヅキはとりあえずフォルトゥナにそう問い掛ける。
『えっと……どうやらその透明な壁の向こう側のようです。その扉を閉めれば、向こう側を開ける事が出来るようです』
『なるほど。そういう事なら、ちょっと向こう側に行ってみよう』
『お気をつけて』
警戒しながら調べてみたが危険性は感じられなかったので、予想通りのフォルトゥナの返答に、ヒヅキはそう告げて通路の中に入る。
通路の中は暗かったが、光球を浮かばせれば問題ない。
ヒヅキが入って少しした後、入ってきた扉が閉められた。どうやらどこぞの扉のように、扉を一時的に何処かに飛ばす事で開閉する扉だったらしい。
そのまま通路に沿って進むと、何事もなく透明な壁の向こう側に見つけた扉の前に到着した。




