仕事17
朝食を終えると、ヒヅキ達は荷物を取りに一度宿舎へと戻る。
それが済むと、宿舎前で全員集合した。
「各班ちゃんと全員居るか確認しろ。ここに置いていく訳にはいかないからな!」
人足頭が班毎に人数の確認を行わせる。それで全員集合している事を確認すると、人足頭はシロッカスに集合が完了した事を報告する。
それに頷いたシロッカスは、ヒヅキ達護衛の四人の方に一度顔を向けてから、「では、帰ろうか」 と皆に伝えた。
人足たちと護衛を引き連れてシロッカスが砦の門前まで移動すると、そこには帰りの食料や消耗品の類いが用意され、鎧を身に着けた女性がシロッカスと言葉を交わす。
「…………」
少し離れたところからその女性を見たヒヅキは、その顔に見覚えがあった。
(昨夜の……)
昨夜にヒヅキがスキアの話をしたその女性は、どうやら上の地位の人間だったらしいと妙に納得出来たヒヅキは、そのまま視線を周囲に居並ぶ兵士へと向ける。
女性の近くには、ヒヅキ達を宿舎まで案内した綺麗な鎧の男性達が控え、その後ろに重装備の兵士が数名立っていた。
他には砦側の冒険者とおぼしき人物も複数確認出来る。
その厳重な警備と場に漂う緊迫感のある空気は、シロッカスと会話する女性の地位を示すモノなのか、それともスキアに対する警戒の為なのか。
(もしかして、あの女性が……?)
もし地位を示すモノだとしたら、それはすなわちその女性はケスエン砦の指揮をしているエイン殿下その人だということであろう。
その事に思い至り、ヒヅキはスキアへの警戒を適切な人物に出来たものだと少々呆れる。
何故なら、第3王女だと聞かされていたが、あまりに無防備だと思ったからだった。いくら砦内だったとはいえ、昨夜は供など見当たらなかった。
それでいて、素性の知れないヒヅキのような人物に語りかけてくるのだから、よほど腕に自信があるのか、単に何も考えていないのか。
(どちらも違うかな?)
腕はあるだろうが、それでも冒険者に勝てるほどではないし、まだ隣の綺麗な鎧を身に着けた男性の方が強そうであった。
かといって、疑わずに直ぐに話を信じたところから、何も考えていない阿呆かといえば、到底そうは見えなかった。であれば。
(人を見る目に相当な自信があるのだろうか)
ヒヅキがそう考えていると、シロッカスと女性の会話が終わり、人足たちがシロッカスの指示で用意されていた補給品の載った荷台へとついた。
「それでは、出発だ!」
「開門!!」
シロッカスの掛け声に続き、女性がそう大声を出す。
それを脇に控えていた綺麗な鎧を着た男性の一人が大声で復唱すると、重々しい音を響かせて門がゆっくりと内側に動き出した。