神域への道117
崖を覗いてみると、崖下には闇が広がるばかり。元々周囲が薄暗いのもあるが、それにしても真っ暗という事は余程深いという事なのだろう。フォルトゥナが言うには、一応底はあるようであるし。
(精度優先とはいえ、底まで感知魔法が届かないとは。それでも感知範囲ギリギリに岩の頂上が届いているようだから、底はもう少しといったところだろう)
そんな事を思いつつ森に戻る。ギリギリまで森のようで、森と崖の間は1歩分ぐらいしか空いていなかった。
崖下を覗くついでに周囲を見回してみたが、崖に橋か何かが架かっている場所はない。
対岸の森は、ヒヅキ達が居る側と違って何種類かの木が確認出来る。自然かどうかは知らないが、少なくとも全て同じ木という訳ではないようだ。
(という事は、研究施設はこちら側だろうか?)
ヒヅキは対岸の様子からそう考えるも、フォルトゥナに確認してみると、対岸の森にも一部同じ木が密集している部分が確認出来たらしい。
それでも研究という部分で考えれば、森全体が同じ木の現在居る側の方が関わりは深そうだ。
(それとも、向こうで実験した後に、ここに森を造ったのだろうか?)
対岸は一部同じ木とはいえ、全体は様々な木が生えている。だが、ヒヅキ達が居る側は、確認出来た範囲全てが同じ木であった。つまり、ここは造られた森である可能性が高いという事。
(という事は、実験施設は向こう側に? いや、どちら側にも在るという可能性もあるか。というよりも、同じ木を造る実験はこちら側で、他は向こう側でと分かれている方が自然だろうか?)
崖に沿って移動しながら、ヒヅキは何処かに目印はないものかと周囲に目を向ける。ついでに対岸に渡る方法も考える。対岸まで結構な距離があるので、跳んで対岸に渡るのは不可能だろう。
(魔法を使ってもな)
一時的に足場を創るとか、魔法で跳躍力を増やしたり疑似的な飛行を再現するとか考えられるが、どれも確実性に欠ける。この空間は風が吹いていないので、その辺りはなんとかなるのだが、対岸までが結構な距離なので、失敗して崖底に転落という可能性がどうしても消せない。
(可能性は低いだろうが、確実性に欠けるからな。それならいっそ橋でも造った方がいいような? いや、それはそれで大変か。1度底に降りてから登るのはそれ以上に大変かもしれないが……研究施設が崖底に在るという可能性も考えられるか)
発見される可能性が低いという意味であれば、崖上の森の中よりは崖下の方が安全かもしれない。そう思えば、1度崖を下りるというのも選択肢に入るだろう。
そうなると、橋などなくとも一旦崖を降りてから登るという方法も考えられる。それであれば、魔法で崖に階段を造れば意外と簡単かもしれない。
しばらく思案したヒヅキは、そうする事に決める。とはいえ、まずは森をある程度調べる方が先決だが。
フォルトゥナにそんな話をしながら崖横を移動する。何処でもいいので、空間を隔てる壁を探してこの空間の広さも把握しておきたいところ。
色々やる事があるなと思いながらも、ヒヅキがしばらく移動していると、フォルトゥナから壁を発見したと報告が来る。
その報告よると、更に先に進めば背の低い山が見えて来るようで、その麓に壁が在るそうだ。森もそこまでらしいので、これで後は反対側の壁まで行けば、一応の幅は把握出来るだろう。




